Translate ~Select your language~

ラベル 考察 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 考察 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2023年2月23日木曜日

タイヤ周辺の空力について考える

車において一番空気の流れを乱すのはタイヤと言っても過言ではなく、以前触れたようにメーカー純正状態でタイヤストレーキやフェンダースリットといった機構が付くようになってきました。



フェンダースリット。効果についての詳細は以前の記事をご確認いただければと思いますが、ようはバンパーで取り込んだ空気をタイヤの外側に流すことでタイヤハウス内の空気を引き抜く作用をしているものです。

これまではいかにタイヤハウスの空気を「車の外」に出すかが重要と考えていましたが、乱れた空気は「車の下」に追い込むことも大事なようです。




こちらのページ様によれば、タイヤによって発生した渦によって車体側面や背面の負圧領域が増えないよう、タイヤストレーキ等で車体内側に空気を追いやることが大事だそうです。

そう言われればタイヤストレーキって純正状態では正面から見ると内側にオフセットしている車が多いですよね。



画像はコチラのページ様から。
赤印つけたタイヤの外側にはストレーキがなく、内側へ少しナナメに取り付けられています。

ここまで見てきてフェンダースリットで外側の流速を上げつつ、乱気流は車体下面に押しやることが重要と分かりましたが、現代の車はどうなっているのでしょうか。

90スープラをみると面白い構造をしています。



こちらのページによればスープラではエアカーテンをタイヤハウス内側に設けて乱気流を車体内側に抜こうとしているようですね。

と言うことでエアロダイナミクスは年々進化しているので動きが面白いですね。
ジムカーナや低速サーキットでは効果が薄そうですが、高速サーキットでは効果がありそうですのでダウンフォースは増やせなくても抵抗を減らしたいと考えている方にはヒントになるかもしれません。
久々の考察シリーズでした。


他の記事をお読みになりたい方はサイトマップや↓の検索・ラベル等からご参照ください

2022年6月3日金曜日

タイヤとホイールの太さの関係について

前回までの記事では「タイヤの横力剛性にはホイールサイズが寄与」と書きました。

(このブログはリライトです)


その考察をもとに自分で確かめるためにタイヤを組み替えて実験(実走)したことがあります。
内容としてはフロント7.5j、リア8.5jに235/40/17と255/40/17(銘柄はZⅢ)だったのを、フロント8j、リア9j変えたらどうなるか、です。

ダンロップの公式サイトより実タイヤ寸法幅は243、262mmです。
ホイールは1インチ=25.4mmで計算すると

フロント:
 7.5j=190.5(mm)
   ↓
 8j=203.2(mm)

リア:
 8.5j=215.9(mm)
   ↓
 9j=228.6(mm)

になります。この値からホイールの幅とタイヤ幅の関係を計算すると、

フロント:
7.5Jから8Jにした場合ホイール/タイヤ 
 78.39%
  ↓
 83.62%

リア:
8.5Jから9Jにした場合ホイール/タイヤ
 82.4%
  ↓
 87.25%


それぞれ5%程太くなりました。






ちなみにメーカーは235/40/17は8~9.5J 、255/40/17は8.5~10Jが適正となっていますのでそれぞれ

235/40/17  83.62~99.3%
255/40/17  82.4~96.94%

がメーカー指定ホイールサイズになります。大体80~100%ぐらいですね。ここで概ね100%を超えないのがポイントです。
昔のSUPER GTでは330/40/17or18が使われており、タイヤ実寸法幅はZⅢと同じく表記3%増しの339mmとした場合、組み合わされているホイールが13Jなので


13J = 330.2

タイヤに対して約97%の太さのホイールを使用しています。つまりメーカー推奨ホイールサイズの上限値あたりでレースでも使っていることになります。


ただしこれらのレースタイヤはハイトも厚いので一概に同じには考えられないかもですね。。。。330/40/18ってハイトが132mmもあるので、235/40/17の94mmとはエライ違いです。



考察後の運転インプレッションとしては・・・










Σ(・Д・ノ)ノこんなに変わるのか












って感じです。

言葉にすると難しいですが、フロントはスッと舵が利くイメージです。
ただやっぱり弊害もあって、フロントはブレーキロックが出やすくなったし、リアはスタートダッシュやサイドからの立ち上がりがピーキーになりました。


ということで一般的にはにホイールサイズは適正範囲の上限ギリギリのサイズを使うのが良さそうですが、前回の考察のとおり、スタートダッシュ等の縦方向を重視する場合はあえてホイールサイズを落としてみるのもよいのでケースバイケースですね。


他の記事をお読みになりたい方はサイトマップや↓の検索・ラベル等からご参照ください

2022年5月24日火曜日

タイヤのグリップについて考察3

前回に引続き、タイヤについての考察です。

今回はタイヤは太ければコーナーが速い(CFが得られる)のか、また縦方向のグリップはどうすれば良くなるのかについて、です。


・太いタイヤは横力に対抗できる?


前回までの考察だとタイヤを太くしても接地面の縦横比が変わるだけで接地面積が変わらない条件で考えてきました。ところが実際は若干変化(面積が拡大)します。

面積が増えるとなぜ速いコーナリングができるのか。

その答えがここのHP様の「タイヤを太くすると何故グリップが上がるのか」を見てもらうと分かります。
このHP様の結論は太くすると最大荷重時の摩擦限界が高くなると言うことです。




太くすると赤い所まで限界が上がる。(自動車を物理する 様より)


300kgぐらいまでの荷重では細いタイヤも太いタイヤも比例的にグリップがあがりますが、そこから先の限界の伸び具合に差が生じます。つまりこのグラフで用いたタイヤで行くと、仮に荷重移動したとしても片輪に300kgしか掛からない車であれば細いタイヤだろうが太いタイヤだろうが一緒なワケです。
逆に太いタイヤを履かせた場合、バネ下重量が重くなるし、走行抵抗増えるし・・・なにより値段が高くなるのでマイナスしかないわけです。



また補足として前回説明したように空気の働きだけを見ると、サイドウォールの厚みが高い方が剛性が高いという理論が成り立ち、トレッド面全体が偏心しやすくなる(タイヤを正面から見たときにトレッド面がホイールセンターからずれる現象)のですが、単にサイドウォールの「ヨレ」だけみると、ゴムなので横からの力がかかった時の変形が大きく、ある程度はサイドウォールを薄くした方がCPが得られるという工学書の実験結果が乗っていました。


また横幅を広くしたときのグリップに関しての補足説明としては、金属やゴムなどの表面は一見平らに見えてもミクロの目で見ると凹凸があって、目で見えている接地面積と、実際に地面にタイヤが触れている真実接地面積は違います。


「車両運動性能とシャシーメカニズム」の図2-66より

実際地面と接している面積は見かけの接地面積、世間一般的に「ハガキ一枚分の面積」よりも少ないという事実があります。
細かいことは省略しますが、ゴムを柔らかくすると地面の凹凸に沿ってゴムが変形するので、真実接地面積が広がり摩擦力が上がるというからくりになっているのですが、真実接地面積も前回の「横滑り角とコーナリングフォース」の図のように、面積と摩擦力が比例関係にあるのは初期だけで面積が大きく(タイヤでいうと温度が上がったりして柔らかくなる)っても、それ以上は摩擦が上がらなくなります。つまり上のHP様のようにある程度まで荷重を掛けるとそれ以上限界は上がらなくなります。

よって熱が入らなくても最初から柔らかいSタイヤはいきなりタイムが出ますし、熱が入りすぎてもグリップが上がらない(タレる)症状が出てくるわけですね。





以上説明してきた摩擦力は接触している物同士の表面の分子の間に引き合う力が働いており、滑らせようとすると「分子間力によるせん断抵抗力」が発生するために生じる現象でした。
しかし摩擦力を生じさせるにはもう一つ「変形損失摩擦力」というのがあります。
これは凹凸のある路面の上を走ればゴムの接触部分は変形と復元を連続して発生し、運動エネルギーが消費されることによって生じる摩擦力です。
つまり縦方向に柔らかくて粘り気のある(ヒステリシスロスの大きい)タイヤであれば得やすい物になります。
具体的にどういうものか考えを進めてみました。








・ゼロ発進におけるタワみの極み

今まで横向きの力に対してどの位タイヤが耐えれるか見てきましたが、この摩擦力(ヒステリシスロス等によって生じるもの)は主に縦向きの力に対してどうかと考えて良いと思います。
即ちサイドターンやゼロ発進時に、どんなタイヤがどの様な特性を持つかと言う事です。


タイヤの地面に触れている所は、外径に対してある一定の割合で潰れて平らになります。(例えば上図の接地長は仮に直径640mmのタイヤの3%とすると60.23mmとなります。もちろん空気圧が一定の場合で考えます。)
接地長というのは細いタイヤの方が長くなるのは前回の通りですが、接地長のタイヤ外径に対するパーセンテージは同じ銘柄、同じ荷重の場合あまり変わらないらしいので大きい外径のタイヤの方が接地長を稼げます。(上の条件だと640mmのタイヤだと60.23mmですが、650mmのタイヤの場合61.23mmになるわけですね。ただ実際は勿論この通りに3%のままではなく、2.998%とかに減るとは思いますが。)


と言うことで同じ太さのタイヤでも外形サイズが大きい方がより接地面を稼げるわけです。軽自動車とGT-Rじゃタイヤ幅も違いますがそもそも外形サイズが全然違うのは接地面積と内空気量を確保するためのようです。

コレを生かした極端な例で言うと、ゼロ発進を重視するドラッグレースカーが太くて外径が大きなタイヤを履いてます。



彼らはヒステリシスロスを最大限に発揮させるためホイールは出来るだけ小さくしてハイプロファイリングなタイヤを履いています。これは縦方向にタワむゴムの領域を広く取ることで、発進時の荷重が掛かった瞬間に縦方向にタワみやすくなり接地長が伸びる=接地面積が増えるようにしているみたいです。
ただ注意しなければならないのは接地長が長くなるとステアレスポンスが落ちますので後輪には良いかもですが、前輪につけるのは??



ということでタイヤを太くしたり大きくすることは確かに速く走る上で効果があるようですが、縦横両方のことを考えると無限に太く&大きくすれば良いわけではなくバランスなワケです。
これらの理論の延長線上に、サーキットを走るハードなチューニングカーではサイクルフェンダーとかにしてタイヤハウスを広げ、太くて大きな薄いタイヤを入れ込んで接地面積を広げ、縦にも横にも限界を上げているのでしょう。。。が、一般的な公道を走る車や公認競技に参戦するのであればそこまでできませんよね・・・ってことで




結論

普通にスポーツ走行をするには
太くてもダメ、細くてもダメ。ちょうど良いあんばいが一番いい。





前ホイールを18インチにしてステアレスポンスを、後ろを17インチにしてスタートダッシュを得ると言うSUPER GTがよくやっているセッティングもこれらの理論から「アリ」と判断できるわけです。
ただ一般車競技をする上でタイヤの太さ、大きさなんて同じ車種、同じクラスであれば大体一緒ですし、銘柄まで一緒なことが多いのでアドバンテージにはならないですが。。。

じゃあどうすれば良いかと前のブログに書いたホイールサイズを変更してあげるか、タイヤを上手く使いきれる線形内に収まるよう「荷重移動を少なく」して、4輪へ均等に仕事させるようにすれば効率よく車全体でCPが得られることになります。

荷重移動を少なくするにはトレッド、重心、重量などを考えればいいのですが非常にメンドクサイのでまたいずれってか上記のHP様に詳細に載っているのでそちらをご覧下さい。
GT、F1などは上記の「トレッド、重心、重量」どれを見ても「広い、低い、軽い」を追求している所からもその重要さが伺えます。またそれに伴ってアームの構造も素晴らしいですよね。



タイヤの構造からくる大まかな特性をまとめたシリーズでした。次のブログでは続いて上記の考察に基づいた実験の結果、体感について記載していきたいと思います。


他の記事をお読みになりたい方はサイトマップや↓の検索・ラベル等からご参照ください

2021年10月23日土曜日

PCVバルブの作用について

PCVバルブとはエンジンのスロットルより後ろに繋がるブローバイ配管内に設置されている逆流防止ワンウェイバルブのことで、最近質問いただくことも増えてきたのでリライトいたします。




①PCVの配置

エンジンは動いているときはブローバイガスと呼ばれる、燃焼室から漏れ出たガスとエンジンオイルミストが混ざり合ったものが必ず発生します。


こんな感じですね。

このブローバイガスというのは未燃焼ガス等が含まれており、エンジンオイルの劣化を促進させてしまうので速やかに排出させることが求められます。
以前ブログを書いたように、ブローバイガスはスロットルの前と後の2系統の排出系統を持っており、おおざっぱに言うと「アクセルオフの際はスロットルより後ろ側から、アクセルオンの時はスロットルより前側から」ガスを排出しています。スロットルより後ろにつながるホースはエアの噛みこみを防止するためPCVバルブと呼ばれる、ワンウェイバルブが設けられています。


エンジンルームの


インマニに繋がる、こちらのホース。


根元に黒いプラスチックがいますが、これがPCVバルブです。
ちなみに社外のワンウェイバルブをつける方もいるそうですが、こちらのページにも記載されているように、一般的には液体の圧力でしか開閉しないので、PCVとして使うと不具合を起こす可能性もあるそうです。



②PCVの役割、効果


2系統を用意することでアイドリング状態でもクランクケース内に常にフレッシュなエアを送り込むことができ、エンジンオイルの寿命を延ばすことができるようになったのだとか。(最近は1万キロ以上無交換というのも聞きますね。)

さらに副次的な効果として、ブローバイガスがクランクケース内に溜まったままだと圧力が高くなってピストンが動きずらくなる=エンジンの出力が落ちるので、クランクケース内を負圧にしてあげることで出力向上にも買っているそうです。



③PCVバルブを塞いだら?


メリットばかりに見えますが、デメリットもあります。
アイドリングや街乗り程度の負荷だとPCVバルブ側からブローバイガスをメインで吸い込むため、インマニや燃焼室がドロドロになりやすいという点があります。
そのためしばらくPCVバルブを塞いでスロットル前側のホースだけにし、キャッチタンクを付けることでガスを可能な限り吸わせないようにしていました。




メクラキャップを使ってPCVバルブとインマニ側の入り口を塞いでました。

ところがアクセルオフの状態ではブローバイガスが溜まりやすくなるため、アクセルオンした瞬間に一気に吸引してしまい、白煙を吐きやすくなってしまいました。
例がこちら。




アイドリングで溜まったブローバイガスが、アクセルオンで一気に吸引されてスタート直後はすごい白煙を吐いています。
とは言えここまで白煙吐くのは競技のような全開走行時だけで、普段は離されているためか、以前よりキャッチタンク油量が増えていたので「エンジンにブローバイガスを吸わせたくない」という目論見は達成されています。(なおエンジンオイルの劣化が進みやすくなるデメリットがありますが、そもそも競技2~3回に一度、500km程度で交換しているのであまり気にしてませんでした。)

この状態で4年ぐらい乗っていましたが、特に最近オイル粘度を変更したこともあってかスタート時の白煙が上記の動画のように増えてしまったので周りから「タービンブローしてない?」的なツッコミが増えてしまいました(笑)


④PCVバルブを戻したら?


上述したようにバックミラー越しに白煙が見えるねは精神衛生上あまりよろしくないので、ブローバイPCVバルブ系統を復活させてみたところ、先日のブログで上げた競技走行の動画をみても白煙が如実に出なくなりました。

また驚いたのが、競技走行時にはあまり感じませんでしたが、普通に坂を重めのギアで上っていたところ、PCVバルブを殺していた時より気持ちトルクがあるような気がしました。(プラシーボ?)
もしかしたら微々たるものかもしれませんが、街乗り時のようなあまりスロットルを開けてない状況において上記したクランクケースの内圧が下がったことによる副次的な効果かもしれません。

定量的に示せる変化としては、PCVバルブを復活させたことでアイドリング回転数が70~80rpm上昇しました。つまり70~80回転分PCVバルブから空気を吸えるようになったのでしょう。

メリット・デメリットありますが、結局純正の2系統のブローバイホースがあった方が良いような気がします。一方でインマニがブローバイで汚れやすくなるので定期的にエンジンコンディショナーやワコーズのRECSを実施すれば良いのかもしれませんね。
エンジンコンディショナーやRECS、燃料添加剤であるフューエルワンのデメリット、注意点について調べてみましたが、またこちらのブログにて。


他の記事をお読みになりたい方は↓のラベルや関連ページ等からご参照ください。

2021年8月16日月曜日

アルミホイールナットの強度について

バネ下の軽量化はとても重要で、ホイールのみならずナットも軽量化される方も多いと思いますが、特にアルミのホイールナットは以前も触れたように、強度的に不安な部分がありますが、こんな投稿を見かけました。


 

単位が違うところが気になりますが、要はアルミであればA7075-T6という超ジュラルミンでギリギリという考察をされています。

やはりホイールナットはアルミを使うのであれば使い捨て、できればチタンもしくはクロモリ等の強度があるナットを用いた方が良いのかもしれません。



この手の大手のKYO-EIやDIGICAMも基本的にはクロモリやチタンを推していることからも、リスクを考えるとアルミは避けた方が良いかもしれませんね。


金額だけ考えるとクロモリの方が現実的ですね。

他の記事をお読みになりたい方は↓のラベルや関連ページ等からご参照ください

2021年6月8日火曜日

ターボ車のレスポンスアップ加工

先日インタークーラーの加工についての記事を見かけたのでリライトです。 

 ターボ車はタービンで加圧されて熱くなった空気をインタークーラーで冷却させ、酸素の充填効率を向上させています。
以前少し考察させていただきましたが、このインタークーラーというのは圧損が生じてしまうのでパイピングを短くしたり、インタークーラー自体を小さくする(水冷式にする等)ことで効率を上げているようです。

チューニング業界では調べてみるとこのように空気の入口側をテーパー加工することで圧損を低減させるという記事も散見されてきました。


これが元の状態。これが下記のように


テーパー加工して入口を広くし、圧損を減らすような加工をしています。
ばくばく工房様より。


このような加工がアフターパーツや加工では一般的です。

またこちらの方は水冷式と一般的な空冷式における流入空気温度の差を検証されていました。


シルビア系でやっている方は少ないのではないでしょうか。
この方の検証結果を見る限りある程度速度が出ている状態、つまりグリップ走行であれば空冷式でも問題ないように感じられます。
(ドリフトで横向いている場合は効果大だと思います)

最近のターボ車はエンジンルームのレイアウト自由度が高いことから水冷式が増えているようですね。




では空冷式でテーパー加工、インタークーラーを小さくする以外に効率化することは出来ないのか。
とくに改善点として注目したのが「アクセルオンした瞬間のレスポンス」です。

これを改善するためにインタークーラーだけでなく、パイプレイアウト全体で考えて見ます。


画像はネットの拾い物です。
インタークーラーは空気の通り道における冷却装置でありますが、一方で網戸のように空気が通りにくくなっている渋滞ポイントにもなる、というのは以前のブログのとおりです。

上記に付随して過給が始まる前の状態、例えばアイドリング状態からアクセルオンした瞬間は「スロットルが空気を吸う⇒エンジンの回転数が上昇⇒タービンが回転し始める」という工程を踏み、空気を吸いたくても通り道に網戸(インタークーラー)があるため吸いにくく、回転数上昇を阻害している可能性もあります。
(低回転における吸入程度ではあまり影響無いかもしれませんが)

アクセルオンの瞬間のみに着目すれば構造的改善策がありますが、長くなったので今回はこの辺で。

2021年5月31日月曜日

キングピン角の作用ついて

今回はキングピン角(別名S.A.I)の話。

前回のブログの続きで以前のリライトですが、どうやったらハンドリングを良く出来るのか考察を進めていくと、キングピン角も1つの重要な要素という事が分かりました。


キングピン角の概要はこちらのHPコチラのHPに良くまとまってますね。

上記のHPの中で注目したいのは「キングピン角があると、ハンドルを切るとタイヤの軌跡が車体を押し上げる方向に動く」という所です。


コーナリング中、外側のバネは縮んでても、ハンドルを切れば切るほどタイヤだけ下方向に動き、結果車体が浮き上がるという現象が生じてしまうわけですね。

キングピンアングルによって持ち上げられる車高よりもバネの縮みの方が大きければコーナリング中のフロント全体の車高は下がります。(バネの縮みよりキングピン角によって持ち上げられる方が大きいという事はよっぽどバネが硬い場合だと思いますが)

よってフロントストラットの車でよくありがちなピロアッパーによってキャンバーを変化させたり、キャンバーボルトを使ってキャンバーを変化



こんな感じでネガティブ側に調整するとキャンバーと共にキングピン角も大きくなってしまうわけですね。
キングピン角よりもキャンバーのほうが実変化としては大きいと思うので、結論としてあまり気にする必要は無いかと思いますが、もし気になる場合でストラットの車はキャンバーボルト側で調整すると良い、と言うのも以前記載しました。

続きは今回も長くなったのでこの辺で。

他の記事をお読みになりたい方は↓のラベルや関連ページ等からご参照ください

2021年5月13日木曜日

スクラブ半径について

以前の記事のリライトですが、スクラブ半径について。
まずスクラブ半径とは何ぞや?ですがコチラのHPに良くまとまっていますね。





小技紹介 様より引用


ワイドトレッドスペーサーやオフセット(インセット)値が小さいホイールを付けるとトルクステア(キックバック)が発生してしまうのはスクラブ半径が大きいことが原因のようです。
更にその影響で、テンションロッドやハブベアリングへの負担、直進性への不安(2枚目)も抱えやすくなり、ワイドフェンダーな方々のピロアッパーやハブベアリングが逝きやすくなるのは必然のようです。


上記のHPで一番気になったのがこの記載。


一般的な市販車であればスクラブ半径はポジティブなのが一般的なようです。
勿論自分が乗っているS15もポジティブです。
上図の赤印のところの「旋回時に加速するとフロントは外側に向かおうとする」とありますが、S15はこの動きが顕著に感じます。
クリッピングについて加速しようとすると大きく外側に膨らみがちで、綺麗に立ち上がれません。
ともすると、単純に考えればスクラブ半径を小さくすれば良いとなります。


S2000やアルテッツァのホイールは+50とかありますが、これによってスクラブ半径が小さいので、キビキビとしたハンドリングの一要素になっているものと思います。




ただ一概にスクラブ半径を小さくすれば良いということも無くて、下図のとおり
画像はコチラのHP様より

スクラブ半径が増えると、外側のタイヤの実ホイールベースが長くなり、逆に内側はホイールベースが短くなります。

では上記を踏まえてドリ車ですごいオフセットのホイールを履かせているのに、初期の反応がいい車があるのはなぜなのか。スクラブ半径だけでハンドリングを考察しましたが、フロントタイヤの動きにはスクラブ半径だけでなく色々考えなければならない要素があります。

が、長くなったので今回はこの辺で。

他の記事をお読みになりたい方は↓のラベルや関連ページ等からご参照ください

2021年2月11日木曜日

スプリングとスタビライザーの効果と関係性

最近あまり勉強できていませんが、スタビライザーって何を基軸に考えればよいのかについて基礎知識を勉強しています。
学ぶにあたり、ネット上だとCCEさんの動画がすごく参考になります。

 

 こちらはまずスタビライザーとは、という動画になります。



次に荷重移動とバネ(スプリング)の選定について。バネレートではなく前後左右方向のレートバランスを整えましょう、と言う話。(F10kg R10kgの車とF20kg R20kgだと変わらないという話)



最終的にスタビとはどうセッティングに使うものなのか、という話です。

左右方向については以前のブログでも考察したことがありましたが、今までスプリングレートは左右のロール方向でしか考慮してませんでしたが、前後のピッチング方向でレートバランスを整えて、左右方向はスタビライザーで行うと言うのが正しいセッティングのようです?
また前提条件としておさらいですが、タイヤは急激な荷重をかけてもグリップしませんし、荷重移動しすぎると限界が下がります。(以前のブログをご覧ください。)

例えばジムカのような急加速、急減速があるような場合はピッチング方向を緩く(前後スプリングレートを緩く)して、スタビを固めたり、サーキット走行であれば逆にすると、理論上は扱いやすくなりそうですね。

ただし結局はタイヤがハイグリップで緩い動きにしなくても対応出来るのであれば固めた方がいいですし、固めて挙動を早めることによって滑って向きが変えられやすくなると言う側面もあるので結局はやってみないとわからない、と言う結論になりますね(汗)
ただセッティング、特にスタビライザーの方向性で悩んだ際はこの理論を思い出すと基礎に戻れるかと思います。

他の記事をお読みになりたい方は↓のラベルや関連ページ等からご参照ください

2020年12月14日月曜日

ダウンフォースとタイヤの耐荷重について考える

近年CFD解析技術が上がってきたという事もあり、一昔前では考えられないぐらいダウンフォースが増えています。 
特にサーキット走行される方は大きいGTウイングを付けたり、車体下面をフラットにしたり、フロントバンパーに「アゴ」を付けたりといったことをすることで飛躍的にダウンフォースが増えていると思います。 




 こちらはアンダー鈴木選手の車両。ダウンフォース凄そうですね。


 一方でダウンフォースが増えるという事は、タイヤへの負担も増えるという事になります。 
以前ストレートでまっすぐ走っているだけなのにSタイヤがバーストした事例がありましたが、考えられる要因として「何か鋭利なものを踏んでしまった」、「たまたまハズレのタイヤだった」もしくは「タイヤの設計耐荷重をオーバーした」あたりが考えれます。
 鋭利なものを踏んでしまった、たまたまハズレだったのはどうしようもありませんが、ストレートで車速が伸びている時が一番ダウンフォースが発生する=入力が増えるので「ストレートにおいてタイヤの設計耐荷重をオーバーした」という可能性は否定できません。 


ただしこの事例はかなりダウンフォースがかかるサーキット車両に限られた話なので、一般道を走れる改造車レベルであれば心配する必要はほぼありませんが、荷重が乗った状態で縁石を踏む場面では、昨今のハイグリップタイヤはグリップが上がっているのに耐荷重の表記はそんなに大きくなっていないので普通の車でも危ういかもしれません。 

タイヤの耐荷重&スピード表記


解決策としては一輪にかかる荷重量を減らす≒荷重移動量を減らすことになるので、王道に帰結してしまいますが「車高は低く(重心を低く)」「車幅を広く」「軽量」であることが、より求められるようになるかもしれませんね。
 (荷重移動を減らす、については以前のブログをご参考に)
他の記事をお読みになりたい方は↓のラベルや関連ページ等からご参照ください

2020年12月2日水曜日

EVのチューニングについて考える(改造)

EV化の流れに伴い、将来的にはEV車メインのモータースポーツ時代が来るかもしれません。現代だと大きいところではフォーミュラEですね。


一般車もEV車になった場合、これまでエンジン車で行っていたチューニングメニューが大きく変わってくると思われます。
具体的にはエンジン車ならではのメニューである

①エンジンの効率の良い回転域を使うための複数ギア(クロスミッションへの変更等)

②出力向上を目的とした改造(ポート研磨等のエンジン本体の改造やマフラー等の排気系の変更など)

このあたりの改造がなくなり、EVならではのアプローチが必要になってきます。EVを動かす為の主なコンポーネントは大体4つです。

VCU⇒インバーター⇔バッテリー⇔モーター

VCUはエンジン車もありますが、車の頭脳です。インバーターはVCUからの命令(アクセルONとかOFFとか)を受けて、モーターに供給する電力をバッテリーから吸い上げ、供給する流れです。


今回は動力の要となるモーターを中心にチューニングについて考えてみます。

これは最大出力が約220kW(約300馬力)、最大トルクが約460Nm(約46kgf)という、現行車ではSUBARU WRXあたりの性能をもったモーターの出力曲線です。4500~4600回転あたりが最大出力となるようです。(濃い緑の線)

ただしエンジンと違って4600回転以降も出力はそんなに落ち込みませんので、ギアチェンジをさせる意味があまりありません。

例えば筑波サーキットを想定し、使う速度域が70km/h~180km/hだった場合、モーター回転数4500~12,000rpmが70km~180km/hになるギア比であれば、変速させる必要がないという事になります。(むしろ変速させた瞬間のラグの方がもったいない場合もある)

仮に225/45/17のタイヤを履いた車のファイナルギアが4.1とした場合、モーターのピニオンギア比(エンジン車で言うミッションの減速比)が1.9ぐらいであればベストマッチな感じです。(1.9というギア比は一般的な車の2速と3速の間ぐらい)

という事で、EV車でギア比チューンと言うのは「クロスミッション」という選択肢から、ピニオンorファイナル変更で使用する速度域に合わせた「固定ギア比」となりそうです。

ただギア比変えちゃうとスピードメーターが狂うのでVCUエラーが出そうですが、そこはキャンセラーがきっと出てくるでしょう←


一方で難しいのが出力向上です。

エンジンのボアアップのような、外見はそのまま中身を変えて出力を上げるのは難しく、モーターとインバーターの大型化、それを制御するVCUも制御変更することになります。さらにバッテリーも大出力に耐えられるか、という話にもなってくるので気軽に手が出せなさそうです。

もし流行るとしたらアクセルレスポンスを少し上げる程度のVCUセッティングぐらいでしょうか。


もしかしたらスワップキットという形で、モーター、インバーター、VCUのセットで販売される可能性は無くもないですが、全てをインテグレートできる会社は中々ないですし、バッテリーまで交換となると個人で購入するには高価すぎるので、2020年現在では想像しにくいビジネスです。とはいえ、色々な国で2030年を境にEVしか販売できない国も増えてくるので、現代の常識すら変わってくるかもしれませんね。(年々安くなってますし)

エンジンと違って部品点数は少ないですが、一つ一つが高価な上に制御変更が必要になるので、DIYやちょっとしたガレージでの改造は足回りやLSD、ギア比ぐらいしかできなくなるのでしょう。ある意味、強制的にイコールコンディションになるのでレース的には良かったり?

ちなみに日産関連会社のオーテックがリーフをチューニングしている記事がありますが、こちらにもVCUはチューニングできるが、駆動系(モーター、インバーター)の開発はコストが掛かりすぎるから断念した旨が記載されています。


世界各国で2040年までにほぼエンジン車の販売が禁止になる見込みなので、2030年頃に販売ているであろう最後のガソリンエンジンモデルはその後20年ぐらいは今の90年代のスポーツカーよろしく価格が高騰しそうですね。ただしガソリンスタンドも激減して不便になりそうですが。。。


改造するというハードルが高いですし、そもそも公道を走る車を改造するという概念も無くなり、手軽にいじれるラジコンやカートみたいなモータースポーツがメインになったりするかもしれませんね。

EVについては仕事柄携わることも多いので、今後も取り上げていければと思います。

他の記事をお読みになりたい方は↓のラベルや関連ページ等からご参照ください

2020年5月7日木曜日

鍛造ホイールのメリット・デメリット

サーキット走行後にホイールをチェックすると、縁石に乗るからだと思いますがクラック(欠け、割れ)が発生していることがあります。
個人的な感覚としては「鍛造ホイール」ほど発生していることが多いと感じ、ドリフトなどの縁石バンバン踏む競技の方は「鋳造」を選ばれていることが多いような気がしていたので、なぜなのか調べてみました。
(結論としては「気のせい」でした…)


モータースポーツをされる方はなるべく軽いものを要望されることが多いと思いますが、ホイールを軽くすることによるメリットは「路面追従性」や「ブレーキ性能」が良くなり、反対にデメリットとして乗り心地が悪くなると一般的に言われています。
(ホイールを軽くするメリット、デメリットは沢山記事がありますので、気になる方は検索してみてください)

なるべく軽いホイールを選ぶにあたって出てくるのが、ホイールの製造方法である「鋳造」と「鍛造」という言葉です。
漠然と「鋳造は溶かしたアルミを型に流し込んで形作る」、「鍛造は金属の塊を叩いて形作る」ぐらいの理解でしたが、なぜ鍛造の方が軽くて強いホイールになるのか理解して無かったので調べてみました。


こちらのHPのご説明が一番よくわかりました。
要は鍛造だと木で言う年輪のような筋(メタルフローライン)を切断することなく、活かしたまま形作るので、薄く(軽く)ても強くて「しなやかな」ホイールができるようです。


と言うことで冒頭で懸念していたクラックに対する強さ(衝撃に対する強さ≒靭性)も含め、全てにおいて「鍛造」の方が優れているのですね。
デメリットとしては生産が難しく、検査工数も多いためコストが高く、複雑なデザインがし難いことぐらいでしょうか。



と言うことで、値段が高いというデメリットを除けば、「鍛造」を選ぶのが良さそうですね。
ただ最近は「鋳造」でも優れた製造方法が沢山あり、軽量で高剛性な製品もたくさんあるので、模造品等の粗悪品を除いて「好きなデザイン、ブランド」で選んで良いかと思います。

他の記事をお読みになりたい方は↓のラベルや関連ページ等からご参照ください。


What is the difference between forged-wheel and casting-wheel? Is the Forged-wheel has good tenacity?

2020年4月21日火曜日

シフト時間の影響について

以前も考察したギア比とシフトチェンジをリンクさせた考察についてリライトしてみました。

一般的にモータースポーツされる方はギア比はミッションを「クロス」、ファイナルギアは「ローギア」にされる方が多いかと思います。
しかしシフト回数が多くなるという事は、それだけ無駆動時間が多くなります。
またシフトアップしたのにすぐコーナーが迫ってきてシフトダウン…って場面では本当にシフトアップしたほうが良いのか悩む場面が多々あります。

まずはギア比について、自分のS15を基準に考えてみました。
S15の比較対照としてS14Ks、AP2、FD3S、DC2 98specを参考に入れてみました。



上段がミッションのギア比、真ん中がファイナル、下段が最終減速です。
こうしてみると、S15は1、2速であればAP2よりもローギアです。
しかし3、4速はAP2よりもハイギアードです。FD3Sは1、2速は少しローギアですが、3速はそこまで変わらないように思います。
インテは1.8NAなのでトルクを補うように比べるとローギアですね。
(右側の黄色の部分は自分の考察用で、ファイナルをS15ターボATの3.9ファイナルとS14などの4.083ファイナルに換装した時の最終減速を表しています。)

例えばS15で1速から2速へシフトアップする場合で考えてみます。
下図はS15の純正での各ギアの速度図です。


1速を7,500回転でシフトアップした時の時速は56.7キロです。
クラッチを切ってシフトアップし、クラッチを繋ぐまで一般的に速い方で約0.5秒ほど掛かるそうですが、仮に56.7キロで0.5秒だと約7.8m進んでいます。
同じように2速から3速では時速93.5キロですので、約13m車が進みます。
3速から4速では時速133.6キロですのでなんと約18.6mも車が進んでいることになります。


理論上は上記の空走距離が生じてしまうため、1速から2速でシフトアップするのであれば、シフトアップポイントから減速ポイントまで7.8m以上あるのであればシフトアップすべきという結論が導き出せます。逆に7.8m以下の距離であれば、エンジンをレブに当てたまま走行したほうが良いという結論も導き出せます。


ところが、現実はもう少し長い区間でなければシフトアップしないほうが良い場合もありそうです。下記は超仮置き条件での考察です。


  • 例えば、1速から2速にシフトアップしたいポイントから、コーナーの入り口(減速ポイント)まで10mあった場合

上記の理論から言えば、シフトアップして2.2mは2速で加速できます。


手書きですみません。
2.2m加速した後にコーナーに進入するためブレーキングをしながらシフトダウンというステップになると思います。
ですが仮にヒールトゥーが完璧だったとしても、シフトダウン中、つまりクラッチを切っている間は「エンジンブレーキ」が使えず、純粋に「ブレーキパッドのブレーキ」だけで減速しなければなりません。
一般的にブレーキのセッティングというのは、ブレーキペダルのみを踏んだ時にバランスが良いようにセッティングするものだと思いますので、ブレーキというのは

「ブレーキパッドのブレーキ力」+「エンジンブレーキ力」

で構成されています。ロックするかしないかの限界領域の完璧なブレーキであればあるほど、少しのブレーキのバランスの違いというのは大きなマイナスとなってしまいます。


よって「ブレーキパッドのブレーキ力」+「エンジンブレーキ力」による、単純にブレーキペダルだけ踏んだ時のバランスでセッティングし、1速から2速にシフトアップ後2.2m加速してからブレーキする場合、その理想ブレーキングポイントというのは「エンジンブレーキ力」が掛からない0.5秒(シフトダウンは一般的に0.6~0.7秒ぐらい掛かるそうです。)分は、ブレーキが弱いため、ブレーキポイントをもう少し手前にしてあげないと止まりきれない気がします。(バイクであれば少しリアブレーキを強く踏めば調整できる範囲とは思いますが。)

ってなると今回の例のシフトアップポイントからブレーキングポイントまで10mという場合であれば「シフトアップしないほうが速いのでは?」という答えが導かれます。

ただエンジンブレーキがどのくらいの強さなのか、また1速の時はギア比の所為でエンジンブレーキが強いですが、ギアが上段になればなるほどエンジンブレーキの力が弱くなることや、こちらのギアシフト時間の短縮の考察でも述べましたが、ギア数が上段になればなるほどシフト時間の短縮は空気抵抗を無視すれば効果が小さいので、この考察はミニサーキットやジムカーナ、サーキットの小さなRコーナーにおいて有効になってきそうです。

またエンジンやギア比、つまり車種ごとによってタイヤに伝わるエンジンブレーキの力は変わると思いますので一概に「何m以上あるならシフトアップしたらいい」と断言はできませんが、


1速、2速の低速コーナーでシフトアップするかしないか悩む距離であれば、シフトアップしないほうが良い場合がある


という事を頭の片隅に、シフトチェンジポイントで悩んだ時の判断材料になって良いかもしれませんね。DCTミッションであればこんなことも悩まなくてよいのですが。。。


他の記事をお読みになりたい方は↓のラベルや関連ページ等からご参照ください。

2020年4月9日木曜日

ABSが付いている車のLSD(機械式デファレンシャルギア)について

2010年以降に登場している車のABSはスポーツ走行をしていても比較的止まりやすく、また横滑防止機能(VSCとかTCSとか呼ばれてます)もブレーキで制御していることも相まって、一昔前の車とはLSDの選択に違いが生じてきているようです。


以前も触れた、特殊な形状のLSDを製造しているOS技研さんのインタビュー動画。
動画でも触れられていますが、86/BRZのように横滑防止機能がついている車であれば、ブレーキングでリアが不安定になった時に左右の回転差をブレーキ側で制御して車を安定させているため、その制御を活かしたほうが車速を殺さない(速い)ので、あえて1Wayを選択しているのだとか。

一昔前のFR車であればブレーキング時にリアを安定させるためにLSDは2Way、もしくはブレーキング時の効きが少し弱めの1.5Wayを選択するのがセオリーでしたが、最近の車はブレーキの電子制御を邪魔しないようあえて1Wayにした方が速いんですね。

新しい車に乗っている方は当たり前かもしれませんが、古い車しか知らない自分は初耳でした←


サーキット走行でフロントのダウンフォースが強い車であれば、FF車でも2Wayというのも取りうる手段なんですね。

ただ近年の車は上述した86/BRZと同じようにFF車においてもブレーキング時の左右輪の回転差をブレーキパッドで制御しているでしょうから、あまりイニシャルトルクが高いとブレーキ制御が無駄に入って車速が自分の意志に反して必要以上に落ちてしまう可能性もありますね。この辺りは走るステージや車両設定、実際にLSDを付けて走られている方やショップの方に聞きながら設定して組込む必要がありそうです。
またOS技研さんもそうですが、以前記載したようにメーカーによって狙っている挙動が違いますし設計コストが違うので目的に合ったLSDを選ぶのは奥が深そうです。

まずは一昔前の「FFなら1Way、FRなら2Way(1.5way)」という考えは取り払わなければならないですね。。。



他の記事をお読みになりたい方は↓のラベルや関連ページ等からご参照ください。

What type of LSD match for recent cars??

2020年4月3日金曜日

バンプステアについて(ドリフトとグリップ走行での違い)

前回記載したスクラブ半径の他にも、ハンドリングを考察する上で外せない要素の一つに「バンプステア」と呼ばれるものがあります。
バンプステアとは、バンプ(ストロークした時)にアーム類の位置関係によってトーアウトになったりトーインに変化することを指します。
多くの車はフロントのナックルの後ろ側にタイロッドがついており、ロアアームと取付角度が違っています。そこでバンプステアをどうセッティングしていけば良いか考察してみました。



今回はストラット車を例に図を見ていきます。なおバンプステア以外の要素は考慮に入れていません。
下図はタイヤを車体後ろ側から見た図です。

まず停止状態(1G)でのロアアームとタイロッドの位置関係。
多くの車の場合、ロアアームよりもタイロッドのハの字は浅めについていることが多いです。この時のロアアームとタイロッドの長さ関係を抜き出してみます。


こんな感じ。
ナックルと車体までの距離を「A」とします。これを踏まえた上でタイヤを単純にバンプさせます。


そうするとロアアームとタイロッドの角度が変わるので相対的な長さも変わってきます。
どう言うことなのか、上図と同じようにロアアームとタイロッドだけ取り出してみます。


このように緑のタイロッドは平行より上となって相対的な長さがAより短くなります。
逆にロアアームは水平になるので相対的な長さが1Gの時のAより長くなります。
(画像はわかりやすいように誇張表現してます。)



その結果どうなるかと言うと、バンプさせるだけでタイヤはトーアウトの方向に動いていきます。
トーの関係を表すため、下図はタイヤを上から見た図ですのでお間違え無きよう。

車体上側から見た、バンプさせた時のタイヤのトー角度。

左が1Gの状態で、右がバンプさせた時のタイヤのトー角です。
勿論この図もかなり誇張して表現していますが、バンプさせるとフロントタイヤのトー角はこのようにトーアウト側にズレるよう設計されている車がほとんどです。

グリップ走行におけるドライバーの感じ方はコーナリング中、外側がバンプして縮むと、外側のタイヤはハンドルを切ってストロークすればするほど(つまり荷重を掛ければ掛けるほど)切れ角が減っていくのでアンダーステアなハンドリングになります。(メーカーサイドからすれば、荷重が掛かる=無理なハンドルで車体が乱れてしまわないようアンダーなセットにしてるのだと思います)



なのでスポーツ走行的にはロアアームの取付角度とタイロッドの取付角度が平行が理想…ですが実際には少しバンプステア残さないと、低速でのコーナリング等で左右アングル差が出来ずナチュラルなハンドリングにならないので、少しだけ角度差があるのがベストでしょうか。
ちなみにイケヤフォーミュラさんのタイロッドエンドは絶妙な取付角度設計になっています。


手持ちで1番わかり易い写真の、ちょうど良いところに写り込んでるイケメン弟子くん←
後で写真はとり直しますが、ロアアームとタイロッドの角度が絶妙に差がついているのがわかるでしょうか。(殆ど平行ですが、よく見ると赤線のような角度差が少しついてます。もちろん赤線も誇張して角度付けてます)
少しバンプステアも利用できるので、ドライバーの体感的にはナチュラルなハンドリングになってます。

ロアアームとセットなら純正と遜色ないバンプステアになるのでしょうが、やっぱり足回りを交換するならキチンと計算(強度、防錆要件とか)されて作られている製品を使いたいですね。


一方ドリフトだと荷重がかかっている外側のタイヤがトーアウト=切れ角が増えるので、前回のスクラブ半径の考察に基づくと、バンプステアが発生した方がキレ角が増えます。更に内側のタイヤもドリフト中はリバウンド(伸びる)すると、コチラもハンドルが切れる方向になるのでなおさらハンドルが切れます。

この図はフロント左右のタイヤを上から見た図。ドリフト中における外側のタイヤは左側になりますね。


ドリフトだとあえてバンプステアになるようにすると荷重移動した際の切れ角が増えるので良さそうですが、言い換えるとストロークする程勝手にハンドルが切れてしまうのでそれを良いと判断するか否かでドライバー評価は分かれそうですね。
(バンプステアを増やす具体的な方法としては、ロアアームにロールセンターアジャスターを付け、タイロッドエンドはあえて純正のままにすると、角度差が出来るのでバンプステアを積極的に利用出来ます)

かなり大雑把に考察してみましたが、バンプステアについてはドリフトとグリップ走行(タイムアタック)で正反対の動き(評価)になるという話でした。
(間違ってたらすみません)

他の記事をお読みになりたい方は↓のラベルや関連ページ等からご参照ください。

What is bump steer?? Is that best setting different from time attack situation and drift situation??

2020年3月25日水曜日

ドリフトにおけるスクラブ半径ポジティブ化について

ドリ車はワイトレや攻めたオフセットのホイールを使う事によって、スクラブ半径が大きくなる(ポジティブ)にもかかわらず、競技中のハンドリングはスクラブ半径が大きい方が良いというインプレが多いので、なぜなのか気になっていました。
(スクラブ半径とは?については以前のブログにて)


ジムカーナにおけるサイドターン中などの低速域では、外輪と内輪のホイールベース差をあえて出すことで内外輪差を吸収できるようにも出来ますが、高速コーナーではこちらのサイトにあるように、駆動方式によって挙動に変化が出て来そうです。
なのでタイムアタックされる方は車幅は広げてもスクラブ半径を出来る限りゼロに近づくよう(ポジティブにならないよう)アーム側を伸ばす、と言うのがグリップ走行だとハンドリングも良くなるし、セオリーです。


一方でドリフトにおいてはワイドトレッドスペーサーをかましてスクラブ半径を大きくした方がハンドリングが良くなるというインプレッションを見ます。(延長ロアアームを付けた上でなお、ワイトレを噛ます方も多い)


考察するにあたり、ドリフトのフルカウンターを当てた時で考えてみます。(アッカーマンアングルは無しとします)


これはフロント2輪の直進時と、下側の図は右にハンドルを切ったときの様子。スクラブ半径0とスクラブ半径がポジティブの場合で切り込んでいくと左右でタイヤ位置が変わってきます。


そして内輪と外輪の各輪における回転中心までの半径を簡易的に点線で計測してみました。

左右各輪の回転中心を求める超簡易図。後輪軸の延長線に前左右輪から直角に伸ばした線が回転半径になるかと思います。
(車体の回転中心を求める場合と異なります。)

この点線だけ抜き取って揃えてみると

こんな感じで左のスクラブ半径が0の場合だと左右の回転半径は同じですが、スクラブが大きいと回転半径が左右で変わります。
(画像は手書きで適当に描いているので厳密ではありません)

この画像のとおり右にハンドルを切っている状態はドリフトだと右前タイヤが外側=荷重が乗っているタイヤになりますので、外側の回転半径が小さくなるという事は右前は曲がる(横に流れやすい)≒スピンしにくくなるので「ハンドリングが良くなる」というドライバーのインプレッションに結び付くのかもしれませんね。(求め方が間違ってたらすみません)

逆に左前のタイヤは回転半径が大きくなって引きずりを起こすので、定番のナックル加工によるアッカーマンアングルを減らす方向にするのは切れ角のみならず、ハンドリング上においても的を得た改造なのかもしれません。
(考慮する上で外せないアッカーマンアングルとは?セットの方向性は?については以前のアッカーマンアングルについてをご覧下さい)


上位の選手では更に踏み込んでエストニアにあるWisefabや、最近ではCUSCOからもナックルが発表されているように、社外ナックルを装着される方もいます。これらのナックルはアーム取り付け角度等、他の要素も考慮して作られているので、競技用に色々最適化されているのでしょう。メーカーによって設計思想が違うのも、見ていて面白いですし、場合によってはグリップ走行に有用な製品も多々あります。

色々なメーカーから足回りの根本的な設計を変えられる部品が次々と出て来ているので、ドリ車のマシンメイキングは面白いですね。

他の記事をお読みになりたい方は↓のラベルや関連ページ等からご参照ください。

What is Scrub radius?? Why does the Drift car has long distance of scrub radius makes good handling during drift??

2019年12月1日日曜日

ハイオクとレギュラーの燃費の違い(軽自動車)

ハイオク車にレギュラーガソリンを入れるのは出力低下を招くので燃費悪化を招きそうですが、レギュラー車にハイオクを入れるのは大きな出力向上は見込めなくても、耐ノッキング性能が向上することから、車によっては燃費改善が期待されるというのは時々聞く話でした。

別段ノッキングが出ているわけではないですが、試しに街乗り車のL700にハイオクを入れて試してみました。





~低速トルクの改善?~

軽自動車、しかもターボ車ということもあり相性が良かったのかもしれませんが、アイドリングから3,000rpmぐらいまでのトルクが改善しました。プラシーボ的なことでもなく、高速道路で80km/h巡行時のブースト計の数値が、レギュラーガソリンを入れていた時より0.1気圧程マイナス、つまりアクセルを踏まなくても進むようになりました。



またプラシーボと言われればそれまでですが、5速ギアでの2,000rpmあたりでの加速はこれまでつらかったのでシフトダウンしていたのですが、シフトダウンしなくても加速できるようになったので運転していて楽になりました。




~燃費の改善?~

具体的な数字として、これまでレギュラーガソリンでの高速道路における平均的な燃費は22.5km/lぐらいだったのですが、今回のハイオクでの高速巡行で24.6km/lという結果になりました。
レギュラーガソリンを入れた時の最高燃費時と同じぐらいの結果です。
気温も違えば走ったコースも全く同じではないので絶対的な指標にはならないですが、個人的には燃費改善に効果あると感じています。

また24.6km/lというのは22.5km/lに対して約9.3%の改善となります。


また日本におけるガソリンの価格については、先日給油した時点ではレギュラー138円/L、ハイオク147円/Lだったので、1リッター当たりの価格差は9円、比率で言うと約6.5%の価格差なので、もし燃費的に上記したように9%ぐらい改善されるのであれば、ハイオクを入れた方がお財布にやさしいという結論になるかと思います。

(ちなみに自分が入れたスタンドではたまたま9円差でしたが、一般的には10円差になるようです。その場合の価格差は約7.2%なので1リッターあたりの走行距離が7%以上改善されるのであれば、ハイオクを入れた方が安価であると結論付けれると思います。)





~燃費改善の効果は軽自動車ならでは?~

自分が入れたL700は660ccの小型エンジン、ターボ、しかも20年ほど前の車ということもあって改善が大きくなりました。
特に軽自動車の660ccエンジンというのはトルクがどうしても薄いので、少しのトルク改善が燃費に影響を及ぼしやすくなります。


逆に3,000ccもあるような車であれば、そもそもトルクがあるのでハイオクを入れてもそこまで燃費に影響はないのでは?と考えます。

また最新の車になればなるほど燃費に大きく寄与する低速トルクというのはメーカーも力を入れて改善しているところですので、軽自動車と言えどもミラジーノ程効果があるかは不明です。





~結論~

少し古めの軽自動車や1,000ccほどのコンパクトカーであれば低速トルクの向上により、ハイオクの価格差を上回る燃費改善が期待できるかもしれません。

また定量的な比較が出来ていないので何とも言えないですが、比較的新しめである2017年式のダイハツ車にも同じようにテストしましたが、5%程燃費が改善しました。(走行ルート&気温が一緒でないのでもっと伸びるかもしれませんが)

5%ですとハイオクの価格差を埋めることができないのでレギュラーを入れた方が良いことになりますが、高速道路で運転は楽になるので長距離運転する際は入れても良いかな?と思っています。



他の記事をお読みになりたい方は↓の関連ページ等をご参照ください。



In Japan, two types of gasoline are sold. That is “Regular gasoline” and “High-octane gasoline".
(High-octane has about 100-octane, but Regular has only about 90-octane.)
High-octane makes more torque than regular, therefore makes good fuel consumption. But the price of regular is cheaper than High-octane.
Which gasoline are totally cheaper??

2019年10月18日金曜日

オイルキャッチタンクとセパレーター

何気なく車の部品を眺めていると興味深いものを発見しました。




GPスポーツから出している86やBRZに取り付けるブローバイキャンセラーなるもの。
要はオイルセパレーターのことかと思われます。

86やBRZはエンジンの位置的にブローバイガスホースのヘッドカバー側が吸気に繋がる出口側より下にあるので、オイルミストをセパレーターで分離して落下させてしまえばキャッチタンクを設置しなくても問題ないという形になっているのかと思います。


これならタンクレスなのでほぼメンテナンスフリーなのがいいですね。
まぁ付けられるのがインテーク側よりヘッドカバー側が低い車、つまり水平対向のスバル車の特権化とは思いますが(一部除く)


その他の車ではオイルキャッチタンクをつけることになるかと思いますが、どちらも目的は「ブローバイガスに含まれる不純物(オイルミスト)を取り除いてインテーク側に戻す」ということになるかと思いますが、市販されているオイルキャッチタンクは筒にホースが付くようにニップルをつけただけのものが多く存在します。


上図で言うところの一番左の形状が多く存在しています。
これだと装着しないよりはマシだと思いますが、本来の目的であるオイルミストの分離という目的があまり達成できていないように感じます。


と言うことでオイルキャッチタンクの内部にセパレートさせる機構がある商品を調べていくと、見つけたのはCUSCOのセパレートタイプ(高価な方)、SARDのtype2、オクヤマ、メタルワークスナカミチぐらいでしょうか。



このように入ってきたガスの中からオイルミストを分離する機構が必要です。

このような構造の中で一番安価なのはSARDでしょうか。



現在つけているのが安物で気休め程度にしか機能していないのでこの辺のブランドの商品を導入したいですね。

ちなみにPCVバルブ側のホースにキャッチタンクをつけている方がいますが、負圧がそこそこかかるホースラインなので取り付けるキャッチタンクがよっぽど密閉性を担保できる商品でないと隙間からエアを吸ってしまい、アイドリングを中心とした負圧領域が不安定になってしまうと思われます。
(一般的なキャッチタンクにはドレンボルトや透明なレベルゲージが付いており、その隙間からエア漏れすることが多い)

ちなみに自分がこれまで見てきた商品は例外なくオイルキャッチタンクについている透明なレベルゲージの付け根からオイル漏れしていたので、上記で挙げた商品の密閉性が気になるところですね。
(少なくとも±1気圧ぐらいは耐えられる密閉性が欲しいところです。ちなみにインマニ側からオイルを吸わせないためにPCVバルブを殺した場合の実験については以前のブログをご覧下さい)


他の記事をお読みになりたい方は↓の関連ページ等をご参照ください。


What is "Blowby gas separator(oil mist separator)"?? Is it built in oil catch tank??