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2024年2月8日木曜日

NDロードスターのミッションが弱い原因と強化方法

サーキット、ジムカーナ問わず、モータースポーツに幅広く使われている現行のNDロードスターですが、よく聞かれるのが「ミッションが弱い」ということです。

純正でもRFではデュアルマスフライホイールを用いて駆動系への激力緩和を行っており、社外のフライホイールにすると顕著にミッションブローしやすくなるとのことです。
順当に考えれば「強化ミッションにすれば?」と考え、調べてみると以下の製品を見つけました。


シンクロ等は純正を使い、ギアのみ強化するという代物。
スーパー耐久公認ということもあり、良さそうですが現在は販売停止。。。
この製品かは定かでないですが、スーパー耐久においては強化品でもブローが続出と聞いています。


現時点、上記のODULA以外に強化品は見つからず、周りのND乗りの方に聞いても「ブローしたら純正のミッションAssyが安いので載替」と言うのが常套手段のようです。
とは言え、ドラシャブローであれば予備を持ち運んでその場で交換、もできますが、予備ミッションを持ち運んで現地で交換、はNDのトランク容量的に厳しいと思うので(?)、ブローのたびに積車を呼んで運んでもらう必要が出てきます。


個人的には「いつ壊れるかわからない恐怖」と「何度も同じ出費が重なる」というのは好ましくないので、何か対策がないのか調べてたら、やはり世界は広かったです!?



海外のBBRと言う会社から出ているNCロードスターのミッションコンバージョンキットです。
こちらの商品ページで以下のようなことが記載されています。
以下は概要です。

  • 専門家によると、NDミッションを強化するにはギア自体の強化だけでなく、ミッションの窯の強化(シャフトの軸ズレ防止)が必要
  • 上記に加えNDはデフでの最終減速比が少ないため、ミッション側のギアに不必要にストレスがかかりやすい
  • 窯とギアの強化・新設計するよりも他のミッションを流用する方がはるかに経済的

ということで、NDのシャーシを共用して使っているフィアットと同じく、NCロードスターのミッションを流用することが一番効率的という判断になったそうです。
またマツダのパワープラントフレーム(PPF)という独特の形状していることや、プロペラシャフトがそのまま使えることもあり、NCのを流用するのが一番効率的、だそうです。


確かにNDロードスターの最終減速比(ファイナルギア比)は2.866と、例えばGR86/BRZの4.1に比べかなりローレシオで、ミッション側での減速量が比較的多い設計になっているようですね。
ただし、社外ECUを使わないのであれば、ギア比変更による車速エラーが出てしまうらしいのでECU対策があわせて必要ですね。




このコンバージョンキットはNCミッションを接続させるためのアダプターや必要なボルト類がセットになって、日本円で約20万円。これでBBR的には「300馬力オーバーのターボ付NDでもOK」だそうです。
(感覚論ですが、このぐらいの部品点数なら日本国内でも数十セット作ることが確約できればもっと安く作っていただけるところありそうな気がします。。。)



換装せずとも、短期的にみれば以前記事にした極圧剤をオイル添加して(or GL5以上のミッションオイルを使用して)、多少の腐食は許容してサーキット現場でのブローを回避すると言う考え方もあっても良いかもしれません。


ということで、NDロードスターのミッションがなぜ弱いのか、そして強化する最適なソリューションについて、海外事例の紹介でした。
(純正が行っている駆動系保護のためのデュアルマスフライホイールとは?はコチラの記事をご参照ください)


(こんなことを書けば、どこかのメーカーさんが作ってくれるのを期待してます♪)

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2024年2月6日火曜日

ハイリフトな軽量ガレージジャッキ(BAL アルミジャッキ1.5t)

サーキットでのタイヤ交換は勿論、自宅等での整備でも有用なガレージジャッキ。
自宅用のハイリフトなガレージジャッキと、サーキット用のコンパクトなジャッキを使い分けられればベストですが、できればサーキットでも整備でも1つで賄えればありがたいです。




一般的に1.5tクラスのアルミガレージジャッキが軽量&コンパクトで持ち運びしている方も多く、次いで2tクラスのジャッキを使っている方が多い印象です。



こちらはアストロプロダクツの1.5tアルミレーシングジャッキ
重量も約11kgと軽量で、自分も使っています。

ただネックなのがリフト量で、整備する際に用いる一般的なリジッドラック(ウマ)に乗せようとすると400mmはリフトが必要になることが多く、このジャッキだけでは賄いきれない場面が多々あります。


低いウマに乗せる際はこれでもいいのですが、ウマに乗せて作業する場合は車の下にもぐることが多いので、結局作業スペースを確保しようとすると足りないことがあります。

400mm以上のリフトとなるとアルミ製では2.0tクラス以上が必要になりますが、重いうえに横幅もそれなりにあるので持ち運ぶには苦労する場面があります。
(1.5tと2.0tを2つ運用するには保管場所がとられるというネックもあります)

2つ運用できるのであれば、自宅におくのはアルミよりリフト量が稼げるスチール製がベストですが、スチールは重すぎて収納するのが大変で非力な自分では使用できず。。。



ということで調べてみると1.5tクラスで400mmオーバーなリフト量を誇る製品が大橋産業(BAL)からリリースされていることを最近知りました。


こちらは11.7㎏と軽量なうえに420mmのリフト量を誇り、「持ち運び」も「自宅整備」も1つにまとめたい自分にはピッタリなサイズでした。


値段もアストロプロダクツの1.5tと、ネット実勢価格はほぼ同じで買いやすく、国内メーカー(製造は海外)というのもいいですね。





しかし本当は以前調べた簡易リフト、もっと言えば日本にはありませんが電源レスのリフトが欲しいですが、個人で手を出すサイズ感ではないですね。。。


2024年1月15日月曜日

ANTARES BLITZK RS(アンタレス タイヤについて)

オートサロン2024を見回すと、聞きなれないタイヤが展示されていました。




ANTARES TIREというメーカーです。
飾ってあったのはまだ発売前のBLITZK RSというハイグリップタイヤ。

タイヤの設計等について伺うと、中身はフェデラルRS-Rの開発陣が設計しつつ、595RS-PROというフェデラル最高峰タイヤは「良い素材・設計をしたがコストが高い」という意識のもと、一つ前の型になる595RS-Rをベースにコンパウンド素材を選定しなおして作ったのがこのBLITZK RSという製品だそうです。

すり減りやすさ(≒柔らかさ)を示すトレッドウェア(TW)は160という、かなり柔らかい部類で、ドリフトの岩井選手も今年から使い始めるそうです。
RS-Rは縦方向は素直なものの、横方向の限界域の動きに特徴があったのでこの製品でどのようになったのかは注目ですね。

またベースがRS-Rなので計測はできませんでしたが、体感的に重量が「重い」タイヤでしたので、タイヤバランスは少し目をつむる必要がありそうです。

サイズラインナップ、価格についてはかなりお手頃価格ですね。




1月下旬以降にリリースされるそうですので、楽しみです。
(ハイグリップタイヤのトレッドウェア一覧についてはコチラをご覧ください)




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2024年1月7日日曜日

トルクが掛けられるユニバーサルソケット(Kimlonton)

自分の車を整備する時等、どんなサイズのボルトがあるのか分かっているのであれば既存のソケットを用いた工具選定がベストですが、時々発生するインチ規格のボルトや、家の換気扇等の規格外の大きさのボルトを外す際に手持ちのソケットでは対応しきれない場合に時々遭遇します。


その際に有用なのがユニバーサルソケットで、日本においてはこんな形のものが一般的に販売されています。



ボルトのヘッド形状に合わせてスチールピンが凹凸し、締めたり緩めたりします。
便利な反面、当たり前ですが大きなトルクはかけられないですし、少しナナメに差し込んでしまうとボルトが回らないこともよくあるのが玉に瑕でした。


ということで出来る限りユニバーサルソケットを使わないようにしているのですが、上述したように時々出現する、手持ちのソケットで対応できないボルトがでてきて、そういう場合に限って硬く締まって緩められなかったりします。

と思っていたらインスタグラムで海外のこんな工具を見つけました。

六角型のユニバーサルソケットです。
これであればある程度トルクをかけて締結できますし、日本で一般的なスチールピンタイプで心配するようなことは払しょくできそうです。
調べてみると、中国のKimlontonというブランドの工具のようで、日本でも輸入販売されています。


これ一つで10mm~19mmまで、インチもミリも関係なく差込3/8のラチェットがあればいけます。(普通のドリルでもいけるアタッチメントも付属しているようです)



サーキットへの持ち運びは勿論、バイクのような工具が持ち運びしにくい場合でも、これ一つ積んでおけば応急処置はなんとかできそうな気がします。価格はオープンですがネットでの実勢価格は手頃で良いですね




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2023年12月28日木曜日

Nankang CR-S V2コンパウンド Part2

以前の記事で、ナンカンのCRSはV2コンパウンドに変わった旨を記載しましたが、続きの情報が出ていたのでパート2になります。

私からも北米のデストリビューターに問合せしていましたが、いち早く台湾のNankangへと言わせされている方の記事を拝見しました。



上記の方の記事によれば、2023年の10週(3月上旬以降)以降に生産されたCR-SはすべてV2コンパウンドであるとのこと。

またV2コンパウンドは「熱ダレに強くなった」というメーカーサイドの見解だそうですが、以前取り上げた海外の方のレビューにおいても同じようなコメントが見受けられます。




コチラの方曰く、こんなコメントをされています。

「71RSに比べると少しラップタイムは早く、71RSよりもタレるまで2週長く持つ。温まった時のレスポンスも良好で、滑る限界領域も使いやすいが、他のTW200に比べて高価」
「温まりはRT660の方がはやく、AutoX(日本で言うジムカーナ)にはRT660の方が優れていると思うが、RT660はピークグリップは低く摩耗も早め」
「でも価格もTW200としては高め」

だそうです。

ゴムを変えたのか、はたまたケース設計を変えたのかまでは分かりませんが、サーキット周回用に熱ダレを抑制したということは、トレードオフとして温まりがV1よりは悪くなっている可能性があるかもしれませんね。

日本で最近購入された方のX(旧Twitter)における製造週のポストを見る限り、既にV2コンパウンドが日本にも入ってきているようなので、これから買われる方は安心して(?)購入できるのではないでしょうか。

上記については日本の輸入代理店であるオートウェイからも返答ありませんが、わかる事実として日本に導入された2022年3月ごろに比べ、約1.6倍の価格で現在は売られているようです。円安の影響もありますが、V2になった影響もありそうですね。

実勢価格は以下の各ネットショップで確認いただければと思いますが、かなり国産タイヤの価格に近付いてきましたね。。。

Nankang CR-S
インチサイズ価格
15
205/50R15
225/45/R15
245/40R15
17
245/40R17
255/40R17
275/35/R17
18
235/40R18
245/40R18
255/35R18
265/35R18
275/35R18
275/40R18
285/30R18
315/30R18
19
245/35R19
275/35R19
305/30R19
20
245/35R20
305/30R20
325/30R20





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2023年12月26日火曜日

LSDの仕組みと特性

最近LSDの特性に話題になっていた&問合せ頂いたのでリライトです。

LSD(機械式デフや機械式LSDと呼ばれる物)とはそもそも何か。下記の説明動画を見つけてきましたが、デファレンシャルギアで本来左右のタイヤの駆動を変動させるとことろを抑え込み、両輪に同じ駆動を伝えることで路面μが低かったり、荷重移動してしまっている状況でも車を前に進めることができる部品となります。



このLSDというのは0.01mm単位でフィーリングが変わる代物ですから、精巧な製造技術が求められます。さらに瞬間的にすごい力がかかる場合もあるため、強固な素材・設計である必要があることから、製造できる会社というのは国内で限られています。

国内のメーカーとしてLSDを販売しているのは

・CUSCO
・OS技研
・KAAZ
・ATS
・IKEYA FORMULA
・TRDやNISMOなどのメーカー系


こんなところでしょうか。
一般的なLSDの構造は下記の図を参照ください。


このようにケースの外側にあるコーンプレートが圧力をかけ、プレートを押し付けることでイニシャルトルクを決めています。駆動力が伝わることで真ん中のクロスシャフトがプレッシャーリングを押し広げ、プレートが密着し、左右の回転差がなくなるという仕組みになっています。

この代表的な構造に最初に大きな改革を起こしたのがCUSCOと認識しています。

CUSCOのRS



このように、今まで外側から圧力をかけていたのを内側からスプリングがプレッシャーリングを押し付けています。
動き方としてはプレッシャーリングがもともと内側から押されてロック気味と言うこともあり、リニアに(すぐに)ロックします。
良い言い方をするとレスポンス良くロックと言えますし、悪い言い方をすると滑り領域が少ない(過渡期のない)ロック特性と言えます。
ショップや走るステージによって意見は異なりますが、FFや4WDだとこのRSのようにカツっと効く特性が好まれ、FRだとMZのような従来型のマイルドな特性が好まれるようです。

ちなみにRSをマイルドにするためにCUSCOではスペックFと呼ばれる、溝のないプレートを開発し、プレートが密着(ロック)しにくくすることでマイルドさを出せます。
ですがこの「過渡期」を作り出すのはプレート同士の摩擦力だけではありません。

これが4年ほど使用したCUSCOのデフケース内側です。



外爪プレートがデフケースに食い込み、くぼんでいます。(食い込み)
寿命と言われればそれまでですが、これだけ食い込んでいるということは、プレッシャーリングが押し広げられ、この溝にそってプレートが動かなければならないのに引っ掛かっかる、業界では「ヒスが発生している」と呼ばれる状況が発生しているということになります。
つまりアクセルONで駆動を入れても、プレートが素直に動けず、一定以上のトルクが掛かって突然動き出し、ロックするという動きがこの溝の部分に起因して出てしまいます。事実、このケースを開封する直前はコーナリング中にアクセルを入れるとある一定のところから突然ロックという動き方をしていました。



次に革新的な構造を作ったと認識しているのがOS技研。
これは上記のCUSCOのプレッシャーリングを外側に押さえつけるのとは反対に、プレッシャーリングを押しすぼめる方向にスプリングの力を利用しています。
つまりプレッシャーリングが徐々に広がるため、マイルドなにロック設定が理論上できそうです。


負荷をかけていない状態。


アクセルオン等で負荷が掛かっている状態。

こちらも購入して試してみたところ、アクセルを軽くONし、駆動力をかけても初期がロックしずらく、またロックし始めても滑り領域(過渡期)が広すぎてロックタイミングが遅い傾向です。感覚的にはプレートとプレートの間にあるオイルがプレッシャーリングに押されても排出されず、滑ってしまっている感覚です。
様々なスプリングレート、スプリングの本数を試し、セッティングを変更しててみても、改善はしましたが基本的な動きは変わりませんでした。当方からもオイルスルーの改善要望を出させて頂き、現在ではプレートの溝の切り方を変えられているようです。ちなみにケースが鍛造で出来ているので、上述したヒスは出にくく、製品品質は高いです。

また86やスイフトスポーツなどの車種限定で左右回転差感応式のプレッシャーリングのデュアルコアと呼ばれる構造を導入しており、片輪浮いているときでもLSD効果を得られるという特殊構造を有していたり、フリー方向のスプリングのおかげでチャタリングが少ないので街乗りメインや、過渡期が長いのでウェット路面では使えるかもしれません。
(イメージ的には強めのトルセンデフのよう?な感覚です)

ちなみに競技ユースだと自分がOS使う場合はバネ抜きにしています。



OSに加え、さらに新しい構造を投入してきたのがIKEYA FORMULAです。
ピロアームは有名かと思いますが、実はLSDも製造していたりします。


こちらはオーソドックスな外圧式のコーンプレートがいる構造ですが、プレートの爪がケースに接続されるのではなく、プレート専用の稼働用軸を配置し、上記したヒスがない設計となっています。
つまり滑り領域(過渡期)とロックのリニアさを兼ね備えた設計となっています。
根本的な構造は勿論、ロックプレートの設計や製造にもお金がかかっており、プレート一枚一枚の圧力の分散等を解析し、表面処理だけの開発だけでも相当手が込んでいるそうで、チャタリングのような圧が一瞬溜まってしまうような動きがしにくいです。
競技ユースでは一番理想的な動きをしますが、カム角の設定が少ないことや、そもそも設定がない車も多いのが悔やまれるところです。


ということでLSDは開発にどれだけ時間とお金を費やせたかで出来がかなり変わってくるようです。ちなみに以前LSDの製造元にフォーカスしたこともあったのでご覧いただければと思います。


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