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2025年10月28日火曜日

ストラットだと曲がらない要因

現行車でもスイフトや86/BRZ等、多くの車がフロントサスペンションの形式としてストラット式を採用しています。
ストラット式とは、ショックアブソーバーがナックル上部を支え、サスペンションアームの1部を兼ねている形式になります。


画像はTein HPより

上図のようにアッパーアームをショックアブソーバーが兼ねているような構造です。

現場でよく聞くのは「ストラットだから曲がらない~」という話です。実際には重量バランスや重心等の影響も大きいのですが、今回は「ストラット構造」に注目するため割愛します。

よく気にするのは減衰力とスプリングレートだと思いますが、忘れがちなのはストラットは構造上「ショックが動きにくい」と言う点です。

コーナリング中はアッパーアームを兼ねているため「横力」がショックに加わります。上図で「強度が不足していると破損」と記載されていますが、別の解釈をすると「普通の構造/材質だと破損するぐらい横力がかかる」と言う意味です。
それだけ横からの力がかかるにも関わらず、ショックアブソーバーとして上下運動も兼ねないといけないわけです。

ここまで書けば気づく方も多いと思いますが、それだけ横力がかかる時(≒荷重が乗ってる時)にショックの動きが良い訳が無いのです。

具体的にはハイグリップタイヤを履いて曲がるシーンで、荷重がかかる(≒横力も増える)状態になればなるほど、ショックアブソーバーは動きにくくなり、バリアブルな抵抗が発生します。

様々なストラット車のフリクションを計測した学術文献を拝見させてもらい、絶対値は公開出来ないものの割合だけ計算したものが下図です。



ストラットと言ってもブッシュが硬かったり、特殊な車種もあるため6車種の平均値をグラフ化してみました。
注目したいのが赤で示したストラットの横力抵抗です。ストラット式サスペンション全体におけるフリクションの約半分は横力抵抗という結果が示されています。またこの結果は一定の横力における平均値であり、スポーツ走行で荷重を掛ければ横力抵抗が増えることは想像に難くないです。

結論としてストラット車は荷重をかければかけるほどショックアブソーバーが動きにくくなる≒バネレートが高くなったような動きをするため、コーナーの奥の方でアンダーステアが強まる可能性があります。


また直巻車高調等の車は上記に加えて「スプリングの捩れ」というフリクションも加わります。

着地状態でホイールの間からショックを観察した事がある方は経験あるかも知れませんが以前記載したようにスプリングは縮む際に捩れます。




写真の赤丸ようにスプリングの上下にテフロンシートを履くのがオーソドックスですが、これでも大きな荷重変動がある時は動きにくく「ガガッ」と引っかかる音がします。


これは外からでも音が確認しやすいものです。(動画2秒あたりと6~7秒あたりが顕著にガガッと聞こえます)
こんな状態でセッティングしようにも、荷重によってフリクションが変わり過ぎて沼に陥ります(実体験)。


構造上仕方ない横力のフリクションは減らせずとも、それ以外の要素をいかに低減させるかが意図したサスペンションセットアップに繋がる近道となります。


そこで出てくるのがパーチェ。
これは3次元的にバネの捩れと座面変形を吸収する代物。理論的にもストラットにはコチラがベストと思います。
ただし価格もそれなりにするので、自分は安価な下記を定期的にメンテナンス/交換してフリクション低減してます。

一般的なID65であればコチラ



ちょっと細めのID60のバネの方はコチラ



NTNの方が高品質ですが、スラストベアリングは消耗品と割り切って安価なこちらを定期的に交換してます。
スラストベアリングを付けてからはフロントの動きが劇的に良くなりました。



勿論ダブルウィッシュボーン等のサスペンション形式においてもスプリングのネジレは発生するので有用ですが、特にストラットはフリクションが多すぎるので、より効果的だと思われます。
(ストラット車はキングピン角を簡単に変更出来る&動き方が変わるのでコチラの記事もご参考までに)


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2025年10月18日土曜日

RE-71RSの廃盤とRE-71RZの登場

海外のモータースポーツ系の媒体であるGrassroots Motorsportsにおいて、RE-71RSの廃盤と、新たにRE-71RZがリリースされる記事を見かけました。


RE-71RSと言えばBRIDGESTONEにおけるTW200クラスの最上位タイヤになりますが、これがモデルチェンジになるという記事です。

この記事の信憑性ですが、オーストラリアの市販車レースルール管理団体であるIPRAAに対し、ブリヂストンがプレゼンを行った内容が議事録として公開されています。



内容を拝見し、新製品であるRE71RZの要約としては以下の通りです。

・RE71RSの代替品であり、筑波サーキットにおける開発テストでは0.5~1秒ラップタイムが速い
・キャンバーは付け気味(ネガティブキャンバー)でウェット性能に影響あるよう設計されている(注釈:おそらく71RSよりつけた方が良いという文脈と思われます
・ブリヂストンとしては4世代目となるRZは、2026年に投入し豊富なサイズラインナップ

やはりBRIDGESTONEと言うこともあり、開発は日本でやっているようですね。
またキャンバーのくだりも気になる所で、トレッドデザインがどうなっているのか。とても楽しみですね。

ハイグリップタイヤのTW(トレッドウェア)一覧についてはコチラをご覧ください。



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2025年10月16日木曜日

2025年TMSCシリーズ第4戦(最終戦)

TMSC富士ジムカーナシリーズの最終戦にエントリーしました。
(年度当初発表されていた日程から変更になっていたのを夏頃知り、既に予定を入れていたので調整するのに苦労しました。。。。)

今年は第1戦、第2戦に出場しましたがLSDのセッティングが決まらず、第3戦はお休みしてLSDを組みなおし(×2回)して、比較的まともに走れる状態になった最終戦でした。
(と言うことで、今年3回目の走行)


今回のコース
ずっと低速テクニカルでFRには厳しいレイアウト。でも変更したLSDを信じて(?)走った1本目


サイドセクションの感覚がつかめず終了。
ただ前回の走行で微妙だったインフィールドも何とか走れるセットになり、トップで折り返し。ちょっとアクセルオフでの動きが微妙なので減衰変更して挑んだ2本目


変更があだとなってゴール前がギクシャク
前日にバネ銘柄を変えてしまったこともこの動きに外撮りだと出ています。
(運転していては分からない←)


と言うことで本当はデフをもう一度組みなおしたい(カム角等はOK、イニシャル下げのみ)ですがイニシャルはその内下がるので(←)、このままで良しとしたい。。。




遠方からも応援&ご参加頂き、とても楽しい一日を過ごせました。
年度内にもう一度ぐらいは走りに行きたいと思っていますが、JMS等のイベント対応もあり、いけても11月下旬以降になりそうです。。。


S15だけでなくストラットの車の方からも「どうしてフロントがそんなに曲がっていくのか?」と質問されました。以前の記事の内容と重複するところもありますし、ベテランドライバーの方からすれば当たり前のことかもしれませんが、フロントの動きに繋がる1要素について次回触れてみたいと思います。



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2025年10月5日日曜日

ND 12Rに施された固体皮膜の強度

昨日から開催されているマツダファンフェスタにおいて、MSRロードスターの200台限定車である12Rの詳細が発表されました。



200PSになったとか、キャリパーが変わっとかの大きな情報は各種web媒体でも公開されているとおりですが、エンジン出力が上がって気になっていたのが「駆動系にどのように手を加えたのか」でした。
発表された内容は「標準車と同じギア比=ベースは同じで、固体被膜潤滑剤塗布したもの」でした。


NDロードスターは構造上どうしてもミッションに負担が行きやすく、ブローのリスクが高いですが、マツダとしてとった対策は上記した「固体皮膜」というもの。
(なぜブローしやすいのかについてはコチラをご覧ください)

では固体皮膜をすることでどの程度強くなるのか、素人なりにしらべてみました。
まずミッションによく用いられる中炭素鋼に施工される一般的な固体被膜は「デフリックコート」と呼ばれる二硫化モリブデンを塗布する方法が一般的なようです。(なので12Rもおそらくコレ)

素材強度については素人ですので、AI等を駆使して調べてみると以下のとおりでした。

・未熱処理のS45C中炭素鋼は160~220HB
・上記を熱入処理するとHRC40~50(370~475HB)
・デフリックコートの耐荷重強度は260kg/mm2(2300lbs)

単位が違いますし、よく調べてみると二硫化モリブデンコートは極圧荷重がかかっても金属のカジリを防止して表面潤滑させるものであり、わかりやすく数字でどの程度硬くなるかという比較は難しそうです。(ミッションオイルのGL5とかを入れるのと同じ考え方ですね)
摺動抵抗も減らすことが出来るのでピストンスカートとかにも施工されていることがありますね。



と言うことでカジリが予防されるので間違いなく標準状態よりは固体皮膜処理した方がブローするリスクは低減できると思いますが、一般ユーザーからすれば長期的にどのぐらいブローしなくなるのかと言うのが一番知りたいところですよね。
(あくまで皮膜のため、皮膜がなくなると通常ミッションと変わらないので長期的に使用すると課題がありそうです。ただ1レース中といった短期的な競技の中でのブローリスクは間違いなく減らせると思います)

ちなみに12Rに搭載されている皮膜処理されたミッションは、限定車を保有している方にしか販売されず、既存のNDユーザーは手に入れることが出来ないそうです。
(本当にやりたければデフリックコートを個人でも引き受けてくれる会社さんがいくつかあるようなので、持ち込むしかないですね)

個人的には長期的に使うのであればギア素材から強化されたミッションの方が心情的には安心できる気がしますが果たして。。。?
(北米マツダが発表した強化ミッションについてはコチラをご覧ください)


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2025年9月4日木曜日

猛暑による軽量バッテリーの発火

昨今、軽量化のために携帯電話等と同じリチウムイオンの12Vバッテリーを積んでいる方が増えていると感じていますが、こんな事例を見かけました。
私自身もリチウムイオンバッテリー関連企業に従事していたこともあり注意喚起です。


猛暑の影響でボンネット内が高温になり、バッテリーが変形するということはつまり、内部のバッテリーセルが膨張してしまったということかと推定されます。

画像はコチラのページからの参考

そもそもリチウムイオンバッテリーは特性上、寒さや暑さに弱く、携帯電話でも熱くなると充電が止まってしまったり(充電制御)、寒いとすぐに電池切れを起こした経験をお持ちの方も多いのではないかと思います。

今回の事例は変形で済んだかもしれませんが、内部セルが膨張したということは、いつ発火してもおかしくない状況です。
以下の投稿は普通のモバイルバッテリーの例ですが、NITEによる実験動画です。


上の動画のとおり、最初はセルが膨らみ、最終的にはパック破裂した後に発火しています。
ちなみにリチウムイオンバッテリーは諸々の理由がありますが振動にも弱く、加振試験をこれでもかとやっているであろうホンダのモバイルパワーバッテリーパックですら、全国の郵便局に配備されているEVバイク発火が相次いでいる状態であることからも、非常に気を遣わなければならない種類のバッテリーになります。


個人的には危険を知ってしまっているため、軽量化するのであれば安心と信頼の鉛シールドバッテリー(ドライバッテリー)の方が、リチウムイオンより圧倒的に安いですし、メンテナンスフリーなのでおススメです。


2輪用によく使われているシールドバッテリーなので振動は勿論、安全性も段違いです。
(あとは圧倒的に安いというところも魅力だと思っています)

その他リチウムイオン電池の特性が気になる方はコチラもお読みください。


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2025年8月14日木曜日

NDロードスター用の強化ミッション発売

MAZDAの北米法人から、NDを含めたロードスター用の強化トランスミッションギアセットが発売になる旨、発表されました。


日本でもワンメイクレースやジムカーナ等、各種モータースポーツで人気のND用強化ミッションの発売はうれしいですね。

上記HPの概要としては以下になります。

・ギア本体の素材変更
・ギアの歯当たり形状変更し、歯全体でトルクを受けとめられるようにして耐久性向上
・純正品よりもギアとギアの遊び(公差)を少なくした
・シャフトスプライン部分も含めてオイル潤滑性の向上
・別売りだそうですが、2速を純正トリプルコーンシンクロナイザーリングだったものをシングルコーンにすることでOHコスト低減とレース中の信頼性向上

製造元はアメリカのSADEV社とのことで、各種モータースポーツの実績もある所で製造されているので品質も問題なさそうです。

ただしあくまで北米法人における取組なので日本へ正式に導入されるかは定かでないですが、ロードスター系ショップさんで取り扱いされるところは増えるかもしれませんね。


ただしNDはそもそもミッション環境的に厳しい設計なので、このギアをつけたからと言って出力を上げている車や強化クラッチつけてしまうと厳しい可能性も否めませんね。
(なぜNDのミッションが弱いかはコチラをご覧ください)



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