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2025年5月2日金曜日

駆動系保護の方法 2

前回の続きで、デフやミッション等の駆動系がブローしてしまうトラブルをどのように回避したらよいのか。
ソリューションとして①滑らす②弱いところを作る以外で、各種業界の取組方法をまとめました。


③エンジンの回転変動を少なくする

これはドラッグレース関連の方では常識だそうですが、エンジン回転数変動をあまりさせないことも駆動系トラブルリスクを減らすポイントだそうです。

具体的にはフライホイールを軽量化せず、あえて重いものを使うそうです。


1速→2速に変速して例えば7000rpm→5000rpmになる場合、クラッチ切ってつないだ瞬間が5000rpmになるのが理想ですが、軽量フライホイールだとエンジン側が例えば4000rpmまで落ちてしまうとエンジン側からは1000rpm分の減速方向、タイヤ側からは1000rpm分の加速方向に駆動系が「ねじられる」形になります。

重いフライホイールを使って6000rpmまでしか落ちなかったら同じように1000rpmの差分があるものの、軽量フライホイールだと駆動系目線で見るとシフトアップする際はつないだ瞬間は減速方向だったのにも関わらず、アクセル踏んだ瞬時に加速側の入力に切り替わるので±の入力で激力が倍増し、ブローにつながるリスクが高まるそうです。


ということで純正より重いフライホイールはないと思うので、駆動系保護の観点で見ると純正フライホイールが一番良い、という形でしょうか。
(ワンオフ等で重いフライホイールを作ってもらう、と言う手もあります)


④ケース剛性

上記③でも記載したように駆動系が「ねじれる」ような入力になること、またミッションは斜めになっている「はすば」構造のため、駆動がかかると離れようとする力が働き、ミッションケース側に入力がでてくるため、ケース剛性が求められます。



上動画の5分あたりから解説頂いているように、スラスト方向にギアが逃げようとするため、ミッションのシャフトを支えるケースの剛性がないと、歯当たりが悪くなってブローする。。。というケースが多いようです。

これを回避するにはミッションケース剛性を上げるしかありません。
ちなみにNDロードスターのミッションケースはNCに比べてかなり薄くつくられています。


勿論、メーカー設計値としては許容される強度を素材含めてOKだからこうなっているのだと思いますが、素人目に見ても剛性なさそうに感じてしまいますね。素人で出来るのは以前紹介したように締結強化ぐらいでしょうか。

ケースを作り直すのは現実的ではなく、ドラッグレース業界等では「ケースをボディと接続する」という方法をとることがあるそうです。

上図はマツダのFR車PPFでの例ですが、赤枠のように前側はエンジンと接続され、エンジンマウントとボディが、後側はPPFとミッションが接続されて「3点で締結」されている状態です。
FFでも3点~4点でエンジンと共にマウンティングされていることが多いですね。ドラッグレースではこの純正のマウントの他に締結箇所を増やしてケースを支えてあげるそうです。


上図は例ですが、緑がボディだとすると、ボディとミッションを青いマウントを追加し、ケースを支える箇所を増やしているようです(締結させる場所もノウハウあると思いますが)


以上が各業界で取り組んでいる駆動系保護の方法でした。
根本的な強化ができれば悩み解決ですが、コストや規則、そもそも部品が無いなど選択肢がない場合に取り組めるいくつかの方法をご紹介しました。
これらを組合わせて駆動系保護を企画してましたが、動いてみて個人レベルだと難しいことを痛感中です。。。

前回の記事や、なぜNDロードスターはブローしやすいのか(その他の車種でもなぜミッションブローしてしまうのか)についてはコチラの記事をご参照ください。


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2025年4月17日木曜日

駆動系保護の方法

どんな駆動方式であれ、デフやミッション等の駆動系ブローというのはスポーツ走行をする以上、リスクはあるものの、車種によって弱い部分が一番被害を受ける(=よくブローする)と思います。

現行車で言うとNDロードスターやGR86/BRZはミッションが、GRヤリスではトランスファーが壊れるような話を自分の周りでは聞きます。特に壊れるのはシフト操作をしてクラッチをつないだ瞬間です。つまり、つないだ瞬間の「激力」を緩和できれば駆動系破損のリスクを大きく低減することができます。
(多くのメーカーでクラッチディスクにダンパーが入っている製品がありますが、この簡易的な機構では吸収しきれてない、ということですね)

ちなみにNDロードスターでは以前触れたようにデュアルマスフライホイールという動くフライホイールを使い、更なる駆動系リスク低減を図っています。


根本的に駆動系強化する以外に、ブローリスク回避にどの様な方法があるなかを素人なりに調べてみました。
長くなるので2回に分けて記載します。



①クラッチを滑らせる

1000馬力も珍しくないドラッグレースにおいて、駆動系トラブルというのは避けられないものですがどのように回避しているのか。
ヒアリングしてみると「スライダークラッチ」という、要はクラッチをわざと滑らせる機構を取り入れているそうです。


クラッチを任意に滑らせて駆動系にガツッと言う「激力」が入らないようにする感じですね。
ただしこのスライダークラッチは走行毎に滑り量を調整する必要があるそうで、一般ユーザーにはハードル高すぎです。


ちなみに同じ「駆動系保護のためクラッチをドンッと繋げない」考え方を量産車で採用してきたのがホンダで、S2000で導入された遅延機構と呼ばれる手法です。


こちらのページに詳細記載ありますが、ドライバーがクラッチペダルを離しても、オペレーティングシリンダーの戻りをゆっくりにしてあげることで、クラッチディスクがドンッとつながらないようにしています。


クラッチフィーリングが悪くなるかもしれませんが遅延機構を入れる、もしくはディスクをあえて滑る(メーカー対応馬力以下)のものにしてあげるというのが、一般ユーザーが取れる手法でしょうか。



②あえて弱い部分を作って逃がす

上記した①の遅延機構は手っ取り早い激力緩和手法ですが、フィーリングが悪くなることもあり、スポーツ走行をするユーザーからは不評なようです。
またドラッグレースと違い、周回レースではシフト回数も多いことからクラッチを滑らせると熱を持ってディスクがゴールまで持たないリスクもあるため、GTやフォーミュラで取入れているチームは皆無だそうです。

それでも周回レースはミッション等が高温にさらされてしまうためブローのリスクはより高く、どのように対策しているかとヒアリングしてみると、交換しやすい部品をあえて「弱く」作っているそうです。


具体的にはタイヤにつながるドライブシャフトをあえて細くしたり、よじれる素材で作っているそうです。
こうすることで、交換が大変&コストの高いミッションを保護しているそうです。


長くなったのでまずはここまで。
コレ以外にも駆動系保護の方法がいくつかあるので次のブログにて。
(NDロードスターがなぜミッション弱いのかはコチラの記事、マツダが純正で入れてきたデュアルマスフライホイールについてはコチラの記事をご覧下さい)



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2025年4月7日月曜日

JB64のラインオフアライメント値の修正

JB64は以前対策したステアリングダンパーレス化でかなりまともなハンドリングになったものの、まだハンドルセンターがズレていたり反応が微妙で、交差点でハンドル操作量と車の動きがリンクせずモヤモヤすることが多いです。

と言うことで、購入してから1年何もしていなかった(タイヤすら外したことが無かった)ですが、時間見つけてアライメント測定&修正してみました。




まずジムニーのPCDは139.7と特殊なサイズで、メープルエーワンゲージでもこのような特殊位置で締めこむ必要があります。(プロセットでないとこのPCDは対応していません)


まずは純正ラインオフの状態を計測。
リアはいじることが出来ませんが、ブッシュの捻じれ等でズレていないか確認です。




結果、リアは左右共にトーイン10'でそろっていました。






フロントはハンドル位置をまっすぐにすると左前はトーアウト5'で右前がトーイン20'強という数値。センターが出荷時からズレているので左右均等になるようにハンドル側を動かすと左右共にトーイン10'ぐらいが純正値という感じでしょうか。


フロントはポジティブキャンバーなので、直進安定性を狙うならばトーイン方向が無難です。
今回は時間が無かったのでハンドルセンターを合わせつつ、純正値半分のトーイン5'で決め打ちしたところ、交差点のハンドリングも勿論向上して乗用車ライクに近づきましたが、それよりも直進の転がりが良くなったことに驚きました。きっと燃費にも効いてきそうな感じです。

この感じだと少しトーアウトの方が良さそうな気もしたので、また時間あるときにチャレンジしてみたいとおもいます。
普通の国産乗用車であればパーフェクトセットで問題ないですが、輸入車やジムニーのような特殊PCDの車はプロセットが必要になります。

2025年3月1日土曜日

ドリフトとグリップのタイヤ表面温度推移(Tire Temp Monitor)

モータースポーツをする上で色々と車をいじることがあると思いますが、全ては「タイヤを使い切る」ことに通ずると思います。


例えばドリフトならタイヤの内側や外側が「片減り」して使いきれてない場合がありますが、キャンバー角や空気圧などが要因と分かればより限界の高いドリフトが出来ますし、練習では「片減り」せず「均等に」タイヤを使い切ることも出来ます。

タイムアタック(グリップ走行)においても、真にタイヤを「使い切っているか」を判断するのはGセンサーや動画だけでは見切れない部分が多々あると思います。


これを解析できる1つの手法として「タイヤ表面温度がどうなっているか」を測る方法です。(大手タイヤメーカーがやっている手法ですね)
一般ユーザーが出来るツールとして公開されたのが、写真の2025東京オートサロンでAPJさんから発表されたタイヤテンプモニター。
(正確にはAPJさんブースに共同出展)

コチラの試作品、実装テストをさせてもらいました。
本当はタイヤの外、中、内側の3か所は測りたいですが、試作と言うことで各タイヤに1センサーのみつけてテストです。


タイヤハウスに小さなセンサーを張り付けるだけです。
今後は測りたい箇所(外、中央、内側など)に複数張り付けての測定もソフト的に可能とのこと。

まずはジムカーナから。コースは下図。
リアタイヤはオレンジ色(サイドブレーキ使用時)に、フロントタイヤは黄色あたりから平均温度が40度近辺まであがっていました。


実際の車載と表面温度モニタリングがコチラ



ジムカーナだとゴール後すぐに表面温度測っても冬場だと40℃程度、夏場でも70℃程度ですが、モニタリングすると路温10℃程度であっても、瞬間表面温度は100℃超えていることがわかります。

下図がスタート~ゴールまでのリアタイヤの表面温度推移です。



続いてRCFで有名なドリフターくんの温度推移です。




ジムカーナコースが狭く、角度が深いこともありますが、250℃超えてます。
これではタイヤもすぐ減りますし、タイヤ路面接地角度がずれてれば「片減り」が生じる条件のため、油温や水温のように、タイヤ平均温度が「●●℃超えたらクーリングしよう」みたいな、タイヤマネジメントも走行中可能になります。


今回は試作品でタイヤの中央のみ測定ですが、これを外側や内側も合わせてモニタリングすれば、キャンバーや空気圧の、ドライバーフィーリングに頼らない定量的な理想値も出せそうです。
(しかも予定価格は複数点計測でもタイヤ一本買うより全然安いとのこと!)
非接触で、車両CAN信号との同期もでき、各種Gセンサー含めた解析ツールとの連携も可能なので、より個人での車両分析可能領域が広がりそうですね。



モータースポーツでより上を目指すために、自分の車とタイヤにとって何が理想なのかを客観的に分析できるツールのご紹介でした。続報に期待です。
(タイヤのグリップとは?太くしたら限界が上がるのか?についてはコチラの記事をご覧下さい)


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2025年2月25日火曜日

JB64 レインボーオート ECU stage1

街乗り車(奥さんカー)のJB64、オートマのジムニーを去年購入しましたが、事前の噂どおり、「とにかく遅いし反応が鈍い」と感じました。

単純に車体が重いというのもありますが、一般的な車での燃費走行をしようにも4速ATが無駄に引っ張ってしまったり、アクセルワークに細かく応じてくれないなど、ストレスフルでした。



あくまで街乗り車なので、ストレスなく、燃費が良くなれば良いなと考えECUチューンに手を出してみました。
行って頂いたのは関東のジムニーチューニングでは有名なRainbow Autoさんに依頼しました。(たまたま家族で出かけた東雲に行く日に、A-PIT東雲のイベント出展されていたのでこれ幸いと依頼しました)



施工は約40分ほど。
施工中は店内で子供達と遊んだりして過ごしました。


帰り道はECUが学習中と言うこともあり、少しギクシャクしましたが、1週間以上経って安定してから乗ってみると「普通の車」になりました。
特にATジムニーは軽い負荷で車速が約53km/hあたりで3速→4速に変速するものの、とっとと4速に入って欲しいのに、純正制御では3速を維持しようとしてアクセル操作に対する応答が乏しく、運転しずらかった(燃費走行しずらかった)ところがスッキリとして「普通の」制御になりました。


一方、デメリットとしては坂道等でアクセルを踏み込んだ時、純正ではワンテンポ遅れてあまり変速ショックが来ないキックダウン制御でしたが、即座にキックダウンされてしまうようになり、奥さんからは「時々びっくりする」という評価を頂いています。
燃費も定量的な比較は出来てませんが、奥さんドライブでいつもの1週間過ごして貰ったところ、結果は約9%程、改善しました。


と言うことでデメリットもありますが、普通に乗れるようになったメリットが大きい改造と言えると思います。
(一般的にジムニーは見た目からいじる人が多いと思いますが、ふらつき防止のステアリングダンパーレス化オートライト設定変更など、まずは使いやすさから。。。)




2025年1月13日月曜日

NDロードスター12Rの強化ミッションとデフ(駆動系)

 オートサロンでマツダスピリットレーシング12Rと呼ばれる、200台限定車が発表されました。


写真は公式HPより


カムやエキマニを変えて200Ppsまで出力アップと足回り変更。。。という、一般の方が気にする部分は色々なニュースサイトで取り上げられていたので、競技する人が気になる「パワー上げて駆動系大丈夫?」の部分を聞いてみました。


Q: 200馬力に上げて駆動系大丈夫?
A: 試験でも色々トラブルが出た
Q: メーカーとして対策は?
A: ミッション、デフは専用の強化、対策品
Q: 現行車乗りのユーザーのため部品販売は?
A: エアロ等は前向きに検討中。ただしミッションは認証上の課題からかなり難しい

とのことです。
最後の「認証上の課題」というコメントから、おそらくミッション型式も量産品とは異なることを意味していると理解しました。
(つまり現行ミッションに少し手を加えたレベルではない?)

個人的に限定200台のために全くの新規で設計/製造してたら700万でも安い気がしているので、海外で進んでいるNCロードスターや124ミッションをそのまま、もしくは少しリファインしたものを載せ、合わせてファイナルギアを変えてるのかなーと予測しましたが、外れたらすいません。。。


(なぜNDがブローしやすいのか、についてはコチラの記事を、とりあえずオイルで対策する場合は専用に開発されたMTFがおすすめです)

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