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2018年8月10日金曜日

ダンパー(ショック)の構造について②

今回は前回の続きでダンパーの構造について。

ダンパーの中のガスがなぜ必要なのかを、ルマンさんのコラムを中心に理解を深めたいと思います。

4.Pump function -Oil displaced by shafts
5.Reservoir
~シャフト(ロッド)によるポンプ作用について~


ダンパーにはピストンを上下させるシャフト(ロッド)がいますが、これの体積というのが実はバカにできないとのことです。
上図のように水にシャフトを入れると、入ったシャフトの体積分の水が溢れ出ますが、この押し出される力がシャフトによる「ポンプ作用」です。

ダンパーでもオイルの中にシャフトが入り込む事でその分のオイルがこぼれる事になりますが、その都度こぼれていたらいくらオイルがあっても足りないので、オイルが逃げ込める空間、「リザーバー」と呼ばれる空気だまりを作り、ここにこぼれたオイルが逃げ込めるようになっています。


ですが走行中はダンパーは上下左右に揺さぶられるため、オイルと空気がシェイクされて泡だらけになってしまいます(汗)
そこで上図のようにフリーピストンと呼ばれる仕切り板を空気とオイルの間に設けます。

ダンパーにシャフトが入るとオイルが押し出され、空気が押されて空気の圧力が高くなります。。。が、あまり効果としては考えなくても良いようです。(下のコラム12のところで)



7.Minimum components of damper
~ダンパーの主要構成要素~

前回のブログと上記のとおり、ダンパーにはポンプ作用、空気だまり、圧力損失の3つが主要要素で、これら3つを盛り込んでダンパーの形にします。


これまでの説明のとおりポンプ作用には大きく「ピストンによるポンプ作用」と「シャフトによるポンプ作用」があるため、構造としては上図のように2パターンとなります。
どちらの構造にもオリフィスがついているため、「圧力損失による減衰力」は得られます。

自分のイメージとしては左側のショックばかりだと思っていたのですが、右側の構造というのも大事で、これらを組み合わせたショックが実は純正ショックでは一般的になってきます。


12.Pressure in the damper(1)
~ピストンによるポンプ作用を得る場合の各室の圧力~


それではピストンがあるダンパーが伸び縮み(リバウンドとバンプ)すると各室の圧力はどうなっているのでしょうか。
ピストンの上側と下側をそれぞれ「上室」「下室」とします。
伸び(リバウンド)の場合は「下室」が圧縮されるので「下室」の圧力は上がりますが、 「上室」にはオイルと一緒にガス室(空気だまり)があるため「上室」の圧力はガスの圧力と同じになるそうです。なぜかというと、ルマンさん曰く「ガスの圧力はほとんど変わりません、正確にはシャフトが抜け出た分だけ下がります。 ガス室の容積はシャフトの出入りによる体積変化より十分大きくするのが常識ですのでガス室の圧力変化はほんのちょっとなのです、ここでは変化しないとして話を進めましょう。 つまり「上室」の圧力は変わらず「下室」の圧力が上がって圧力差が出来てこれが減衰力になるのです。
とのことで、ガスの圧力変化というのはほとんど無視してよいみたいです。

こうして出来た圧力差が伸び(リバウンド)の際の「減衰力」となります。


では逆に縮み(バンプ)の場合は上室が圧縮されるのだから上室の圧力が上昇するのでは?と思ってしまうのですが、気体は押しても手ごたえがないように圧力変化が生じず、上室の圧力はほとんど変化しないそうです。
じゃあどうやって圧力差をつけているのかというと、逆に下室が拡張されるにあわせて圧力が下がり、上室との圧力差が生じるため、縮み(バンプ)の際の「減衰力」となるとのことでした。


13.Pressure in the damper(2)
~シャフトによるポンプ作用を得る場合の各室の圧力~


一方でシャフトによって減衰力を得るダンパーはどうなっているのでしょうか。
こちらでも上記のとおりガス室の圧力の変化はありません。その上で伸び(リバウンド)ではシャフトが抜けていくので下室の圧力が下がります。逆に縮み(バンプ)ではシャフトが入っていくので下室の圧力が上がります。

ここで注目なのが、上のコラム12のピストンポンプ式と圧力の動きが逆となっていることです。
ピストンポンプ型ではリバウンドで下室の圧力が上昇し、シャフトポンプ型ではバンプで下室の圧力が上昇しています。


このように減衰力は圧力差があれば良いのですが、圧力というのは「真空」以上にマイナスになれません。なので圧力の低いほうが「真空」状態になったらそれ以上圧力差を広める(≒減衰力を得る)ことが出来なくなってしまいます。
なので圧力が低下する事で減衰力を得る場合、このシャフトポンプ式で言う所のリバウンドの動きの場合は下室の圧力がゼロにならないように元々の圧力(ガス圧力)を高くするそうです。 ピストンポンプ型の代表選手であるビルシュタインなどは20気圧程度のガス圧力とのことです。









ここでいつも圧力差を得る際に圧力を高める方向で減衰力を得れれば高いガス圧も必要ないのに、と考えてみるとリバウンドの時にはピストンポンプ型、バンプの時にはシャフトポンプ型を使うことでどっちの工程でも下室の圧力は上昇します。
実際に乗用車のダンパーのほとんどはリバウンドはピストン、バンプはシャフトを使ったダンパーとのこと。だからガス圧力は1気圧(大気圧)でガス室ではなくただの空気だまりになっているそうです。


よく「車高調はすぐ抜ける」とは聞きますが、純正形状ダンパーが抜けやすいというのは聞かない理由はこのへんにありそうですね。

ということで「減衰力」がどの様にして得られるのか、その原理の概要は理解できてきました。
ただ実際の車高調等ではこれらの基本構造にプラスして、「減衰力」を調整するバルブが付いています。


次回のブログではこのあたりを勉強して行こうと思います。




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