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2018年8月11日土曜日

ダンパー(ショック)の構造について③

今回も前回前々回の続きでダンパーの構造について。

ダンパーが生み出す「減衰力」というのはピストンとシャフトが生み出す「ポンプ作用」と「圧力損失」によって作り出されるという基本的なことは分かりましたが、よく車高調とかについている「減衰調整ダイアル」というのはどういうことなのか。
ダンパーの構造として付加されている「圧力調整バルブ」についてルマンさんのコラムを基準にまとめて見たいと思います。



8.Damping with & without the pressure control valve

~圧力調整バルブとは~

ダンパーの基本的な構造は前回までのブログでまとめました。今回は発生する減衰力を意図した強さに調整する「圧力調整バルブ」はどのような構造をしているのでしょうか。


オリフィスという小さな穴を通す事で、圧力差が生じ減衰力が生じているわけですが、減衰力というのはピストンの動きが早くなれば早くなるほど強くなり、図で表すと速度に対して2乗のカーブを描くそうです。(上の図のwithout the valve(赤線))
なのでゆっくりな動きの時は減衰力が弱くても、早く動くと減衰力が高くなってしまいます。速い速度域では減衰力が高すぎてサスペンションが動かなくなってしまい、乗り心地も悪く、突っ張ったショックになってしまいます。逆に速い速度でちょうどいい減衰力にするとゆっくりの速度のときには減衰不足でフワフワしてしまいます。。。。

ここで登場するのが「圧力調整バルブ」です。
このバルブには大きく2つの構造、「シムタイプ」と「ポペットタイプ」があります。
まずは一般的な車高調で採用されているシムタイプから。




10.Oil flow,Rebound(sims)

~シムタイプの圧力調整バルブ~


上の図はリバウンド(伸び)の際の動きの図示。

シムと呼ばれるバネ鋼でできた円盤が、バンプ用とリバウンド用に別れてピストンを両側から挟みこみ、 シムの下のピストンには穴が開いていてオイルが流れるようになっています。
ダンパー速度がゆっくりの時はリバウンドシムは閉じていてオリフィスのみからオイルが流れ、速度が上がってくると油圧が高まってシムを押し開いてオイルを逃がしています。

バンプ用の穴はリバウンドの時にはバンプ用のシムに塞がれてオイルが流れないよう、ワンウェイバルブのような形で設置されています。オイルの流路がオリフィスとバルブの2つになるので圧力上昇が抑えられて減衰力は図のように傾きの緩やかな特性になります。(図のsim area)

よってシムの厚さや固さによってオイルの流れを色々と変更できるわけですね。車高調の仕様変更というのは概ねこのシムのセッティングのし直しを指しているようです。
また車高調の減衰調整ダイヤルでは、このシムを上から押さえつけて開きにくくするか、少し緩めて開きやすくするかで調整しているわけですね。場所もとらずコンパクトに色々な減衰を楽しめるわけです。

ですがSUPER GTなどのレース車両はもっとダイナミックに減衰を調整するために、「ポペット式」という構造をとる場合があるようです。



9.Oil flow,Rebound(Poppet valve)

~ポペットタイプの圧力調整バルブ~


ポペットバルブというのは上図のようにダンパーの筒の横から飛び出す形状をしています。
レースでは調整しやすいので採用されていますが、場所をとるため一般車に採用されることはあまり無いようです。

作用としてはゆっくりの動きのリバウンド(伸び)際にはオリフィスのみからオイルが流れますが、速い動きの際は図の左側にあるバルブ(普段はスプリングで押さえつけられている)がオイルの油圧によって押し開けられ、オイルを逃がします。もっと早くなれば油圧が高くなるのでバルブも更に開いてオイルを逃がします。よってポペット式でもオイルの流路がオリフィスとバルブの2つになるので圧力上昇が抑えられて減衰力は図のように傾きの緩やかな特性になります。(図のvalve area)

この時図の右側にあるバンプ(縮み)側のバルブは逆に圧力が掛かって閉じられていますので、シム式と同じようにワンウェイバルブとして機能し、リバウンド側とバンプ側で分けて、バルブのスプリングの固さを変更したりしてセッティングがしやすくなっています。


14.Basic damper

~一般的な純正形状ダンパーの構造~

最後に車高調ならいざ知らず、「コスト」や「耐久性」を求められる純正ダンパー等の一般的なダンパーの構造について。
高圧のガスを入れてしまうとコストや、オイルに混ざったりしてガスが徐々に抜けたりして耐久性に難ががるので、オイルの圧力だけで減衰を発生させる構造をしている下図のような構造が多いようです。


ガスが無い状態で常に圧力差を生じさせるために2つのワンウェイバルブを用いています。
伸び(リバウンド)ではシャフトのポンプ作用によりガス室から上室へオイルの流れと、ピストンのポンプ作用により下室から上室へのオイルの流れの2つがあります。
まずはガス室から上室への流れですがワンウェイバルブAが開いてオイルは抵抗なく流れるので圧力損失がなく上室の圧力が下がることはないので上室の圧力はガス室(ただの空気だまり)の圧力と同じです。
一方下室から上室へ流れようとするオイルに対してはワンウェイバルブBが閉じるのでオイルはオリフィスと圧力調整バルブを通り圧力損失を発生させるので圧力が上がります。この上がった圧力により減衰力を発生させます。


逆に縮み(バンプ)では、同じく2つのポンプ作用によりリバウンドと逆方向のオイルの流れが起きます。
上図の右図のとおり上室からガス室へ流れるオイルに対してはワンウェイバルブAが閉じるので圧力損失により上室の圧力が上がります。あわせて下室も同じ高い圧力のままになります(ワンウェイバルブBが開くため)。
この上昇した上室&下室とガス室(ただの空気だまり)の圧力差が減衰力になります。


この構造を使う事で一般的な市販車はコストが掛かるガスを使う必要も無く、またガス漏れによる耐久性の低下も心配が要らなくなるわけですね。
レース用ではある程度ガスを入れている場合が多いそうですが。



ということでダンパーの基本構造を勉強してきました。
純正形状ダンパーがなぜ車高調に比べて重いのか、なぜ車高調はオーバーホール頻度が高いのかの理由が大分わかりました。

ルマンさんのコラムはまだまだもっと難しいことが記載されていますので、そのうちDIY派の役に立ちそうなところをピックアップしてまとめて見たいと思います。




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